PJ: 林田 力
宇宙開発の徹底的な事業仕分けを
2010年05月30日 06:25 JST
【PJニュース 2010年5月30日】事業仕分け第2弾では、日本の宇宙事業を担う宇宙航空研究開発機構(JAXA)も対象とされ、JAXA運営の広報施設「ジャクサアイ」が廃止に決まった。仕分け人からは「日本の宇宙戦略は誰が決めているか不明確」と宇宙開発自体への疑問が提起され、「ジャクサアイ」は「費用対効果が不明」と結論付けられた。
日本の宇宙開発は麻生政権時代の宇宙開発戦略本部(本部長=麻生太郎首相)がまとめた「宇宙基本計画」によって従来の方針から大きく転換された。そこでは有人宇宙計画や防衛分野での利用などが盛り込まれた。この基本計画策定当時のパブリックコメント募集(2009年5月18日締め切り)で、記者(=林田)は宇宙開発廃止の立場からパブコメを提出した。その考えは現在でも通用する。
宇宙は地に足付いた健全な生活を送る人々の生活とは無関係な頭上はるか彼方にある。そのような宇宙に挑む資金と時間があるなら、この人類の生活圏を豊かにすることに目を向けた方が有益である。現実から目をそらして宇宙で夢想するよりも、地球上での義務を果たすべきである。人類が足を置いている地球には解決しなければならない問題が山積みしている。
地球環境も守れないのに、宇宙開発を進めるのは浪費であり、無意味である。現実に地球環境は悪化しており、大気汚染や大規模自然災害で苦しんでいる人々が沢山いる。その人々を置き去りにして、莫大な国民の血税を浪費し、国威発揚や科学者の名誉心・道楽を追求するのは欺瞞である。人類及び地球上に生息する生命の平和的共存ができてからでも遅くはない。自分たちの身が立つ開発を優先させるべきである。目先の問題を処理できていないのに、未来の夢を語るのは現実逃避である。
宇宙ステーションや宇宙基地を建設したところで、地球上で生活を送る何10億の人類のほんの一部でも養えるわけではない。そもそも先祖代々生活し、住み慣れた母なる地球を捨てて、生存環境を構築するだけでも高価な装置が必要な宇宙で生活することは幸福を意味しない。膨大な国民の税金と、一つ違えば人命まで犠牲にして、競ってロケットを打ち上げたとしても人類が豊かになるわけではない。1986年1月のスペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故は記憶に新しい。
日本の経済的繁栄の一因は宇宙を舞台にした軍拡競争に参加しなかった点にある。宇宙開発が繁栄を約束するならばソ連は崩壊しなかった。米国が双子の赤字に苦しむこともなかった。現実はその逆で、経済性を無視した宇宙開発競争が米ソ超大国の経済を疲弊させた。宇宙開発は経済にとってお荷物である。地球上で生活する人類に恩恵を与えないものが経済発展をもたらすというのは幻想に過ぎない。
何の戦略もないまま先端技術というだけで飛びつくことは昔からの日本人の悪癖である。結局は膨大な資金、時間、更には人命までも費やし、徒労に終わるだけである。しかし残念ながら、現実を直視できる人はいつも少数派である。
不況で自分に自信が持てず、ナショナリズムでしか自尊心を維持ない保守・右傾化した層は、「日本」「国産」「自主開発技術」「世界一」などの言葉が出るとROIも検証せずに酔いしれてしまう。日本は経済大国と自惚れているが、経済の規模こそ大きいものの借金の規模はそれより遥かに大きい。
宇宙開発は夢や感動を与えてくれるから、縮小すべきではないとの見解がある。無駄な公共事業に費やす資金があるなら、新しい分野である宇宙開発に投資すべきと主張する。しかし夢や感動を与えてくれるのは宇宙開発に限らない。科学技術には他にも沢山の分野があるし、文芸やスポーツも大きな夢や感動を与えてくれる。それら他の分野の人の夢を否定する一方で、他の分野の方に宇宙開発に対してのみ夢や感動を抱けと強制することは不公正である。以上より、国策としての宇宙開発を廃止して人々の生活を豊かにすることを目指すべきである。【了】
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