【コラム】脱北記者が見た戦争の可能性(下)
その朝鮮人民軍が、太陽政策により息を吹き返した。北朝鮮はこの10年間に、射程距離300キロ以上にもなるミサイル数百基を配備し、人工衛星と強弁しては大陸間弾道ミサイルの実験まで行った。さらに2回にわたる核実験に加え、イラク戦争から得た教訓で、テロ作戦を行う特殊部隊を15万人から最大で20万人にまで増やした。経済が破たんして追い詰められていた朝鮮人民軍がここまで立て直すのに成功したのは、ほかでもない太陽政策によって巨額の支援が行われたからだ。
太陽政策当時、韓米同盟は揺らぎ、韓国の国民も北朝鮮に油断していた。この時こそ、戦争の危険性がかなり高まった時期だ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)前政権当時、韓米間で戦時作戦統制権の移管が合意に至ったのを目にした瞬間、金正日(キム・ジョンイル)総書記は喝采を送ったことだろう。奇襲によって、韓国の首都圏を包囲できる可能性が高まったと判断したはずだからだ。
ところが太陽政策が姿を消したことで、北朝鮮にとっての資金源が断たれ、軍への資金の流れも途絶えてしまった。その一方で韓米同盟は回復し、韓中関係も強化されている。北朝鮮が核実験を行ったことで、中国が北朝鮮を見る目も過去とは変わった。北朝鮮もデノミネーション(通貨単位の切り下げ)など経済政策の失敗で、自国内でどうにか動いていた経済さえ不安な状況となった。今年に入ってからは最前線部隊への配給さえ減らされたという。今は韓国だけでなく、世界各国が北朝鮮による挑発行為に目を光らせている。このような状況では奇襲は不可能であり、戦争はすなわち自滅を意味するということを、金総書記も承知している。表面的には不安が高まっているかのようだが、戦争が起こる条件から考えると、戦争の危険性は太陽政策当時よりもむしろ低くなっている。
記者は「北朝鮮に対して心理戦を展開すれば、朝鮮人民軍は徐々に崩壊する」と予想する。今は北朝鮮による局地的な挑発にしっかりと対応できる備えをしておけばよい。
姜哲煥(カン・チョルファン)記者
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