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「核のない世界」への道のりは長い。だが、破滅と背中合わせの核戦略に依存する現在の世界はあまりにリスクが大きい。目標は遠くても、核に頼らない安全保障へと、さまざまな政策手段を動員しながら一歩ずつ進んでいくしかない。
国連本部で開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議は、64項目の行動計画を含む最終文書を全会一致で採択した。核兵器国と非核国の利害対立で交渉は難航したが、決裂した前回会議(2005年)の二の舞いは何とか回避した。文書は妥協の産物ではあるが、盛り込まれた数々の政策手段を最大限に生かしていくことが緊要だ。
たとえば、14年の再検討会議準備会合で核軍縮の動向を報告し、15年の再検討会議でその後の対応を考えることになった。
核廃絶への行程表を盛り込みたい。そうした多くの非核国の意向は実らなかったが、再検討会議が核軍縮を点検する機能を強めたことは大きな得点だ。NPTはそもそも、核不拡散をめざすだけでなく、核廃絶に向けた成果を積み重ねていかないと成り立たない。核兵器国はその重い現実を直視しなければならない。
これまでの核軍縮交渉は米ロが中心だった。今後は、英仏中が加わった多国間協議を模索していく必要がある。5カ国間では、核兵器の数だけでなく、米国が圧倒的優位に立つ通常戦力、ミサイル防衛なども課題になるだろう。いきなり政府間の協議が困難なら、専門家による政策対話をすぐにでも始めるなど、14年に向けて動き出してもらいたい。
最終文書は、NGOなどが求めた「核兵器禁止条約」構想に初めて言及した。日豪主導の国際賢人会議も昨年末、25年までに世界の核の総数を2千発以下まで減らし、核兵器禁止条約の準備も進めるべきだと提言している。
条約締結の時期が見通せているわけではないし、条約作りへの条件整備にも時間がかかることだろう。それでも、核廃絶を目指す限り、それを確たるものにする包括的な国際法が、やがて必要になる。世界の知恵を結集して、具体的準備を急ぎたい。
核実験した北朝鮮、インド、パキスタン。核開発疑惑の続くイラン、事実上の核保有国であるイスラエル。これらの国が核に手を出した背景には、根深い地域対立がある。地域問題での信頼醸成、和平・軍備管理交渉などを進めなければ、核危機が遠のかないのも現実だ。核に頼らない安全保障は、核保有国間の軍縮だけでなく、地域対立の行方にも大きく左右される。
核廃絶を強調する日本は、核保有国への働きかけに加え、もっと積極的に地域対立を緩和する外交手腕に磨きをかける必要がある。
どこまで自覚のない人たちなのか。またまた角界で不祥事である。
昨年7月の大相撲名古屋場所で、暴力団関係者が土俵下の特別席で観戦、席の手配に親方2人が関係していたことが、愛知県警の調べで分かった。
日本相撲協会は税制面で優遇を受ける公益法人だ。だが角界はここ数年、力士暴行死事件や大麻問題、朝青龍騒動などで揺れ続けている。
先日も野球賭博疑惑で大関が警察から任意で事情聴取を受けた。こんな有り様では、公益法人としての適格性を疑わざるをえない。
名古屋場所で暴力団関係者が使った席は、協会に一定額以上の寄付をした個人や企業などに無償で割り与えられる「維持員席」である。維持員以外の利用は認められず、本来、一般客が手に入れることはできない。
親方2人は県警に対し、暴力団関係者に渡るとは知らずに仲介したと弁明し、直接の関与は否定している。
だが、維持員席の性格上、第三者に仲介すること自体が許されない。親方がそれを知らないはずはない。その席を不適切な方法で手配すれば、問題のある者に回りかねない。そんなことを認識さえしていなかったとすれば、協会運営を担う責任ある立場として、あまりにも情けない。
協会は27日の理事会に親方2人を呼んで事情を聴いた上で、降格などの処分を下した。当然である。
同じような問題が、名古屋場所以外で広がっている疑いもぬぐえない。不正な入場券の流通がないかどうか、徹底した調査を行うべきだ。
それにしても、協会は問題の深刻さを本当にわかっているのだろうか。暴力団との関係を取りざたされたのは初めてではない。横綱が祝儀を受けとったり、関取が組関係者と飲食中に発砲騒ぎに巻き込まれたりしたこともある。暴力団に甘い体質が依然根深いとしか思えない。
協会はこのところ、暴力団排除の姿勢を打ち出してはいる。親方に通達を出し、警察関係者による講習会を開く予定も立てていた。しかし、そんな取り組みを2人の親方たちはまったく意に介していなかった。
協会は今回の理事会で、規約に相当する文書に、反社会的勢力と一切の関係を持たない、などとする項目を盛り込んだが、現場への実効性ある指導がなければ絵に描いた餅に終わる。
文部科学省にも注文したい。協会から再発防止報告書を受け取る、といった型通りの対応ではだめだ。監督官庁として協会運営に目を光らせ、今度こそ強い指導を推し進めてほしい。
規約に相当する文書は、協会の目的を「相撲道の維持発展と国民の心身の向上」への寄与としている。だが、まず自らを律するのが先だろう。