迷走する行政府に立法府も右へ倣えでは救いがありません。あと半月ほどの残り会期、せめて民にそっぽ向かれぬ論戦を。最終盤の国会へ喝、です。
歴史的な政権交代もあって、国会議事堂への参観が結構な人気を集めているそうです。
そう聞いて都内の大学生幾人かとツアーを試みました。なるほど定番の修学旅行生に加えて、中高年のおじさん、おばさんたちもひっきりなし。参観ルートは入り口から渋滞するほどでした。
応対する国会職員の側も手慣れたもので、受け付け、手荷物検査…と流れるように。マニュアル化しているというか、機械的で。
◆民を疎んじては
多数の参観者と機械的なシステム。悪い予感は当たりました。
先導役はひたすら行列が乱れないようにするのに懸命で、口を開けば「すみません、立ち止まらずに、前へ進んで、前へ」。
説明らしい説明もなく、あっても行列後方に声は届かない。パンフを手に参観者は黙々と歩く。正味三十分ほどのツアーでした。
時節柄、国会職員も増やせない事情がありましょうから、ここであえて責めはいたしません。ですが、形だけの参観システムは、やはり問題でしょう。
主権者国民の共有の財産である国会が、参観する国民を疎んじるようでは話になりません。事務局はじめ関係機関の皆さんに善後策をぜひ、とお願いしておきます。
そこで本題。国権の最高機関であり、言論の府としての国会は機能を果たしているか。国民を疎んじていないか、という話です。
取材現場や国会事務局のスタッフたちから、厳しい指摘をさんざん聞かされました。
「今国会はひどい。旧政権、自民党時代の方がまだまし」と。
鳩山民主党政権の国会運営そのものが指弾されているのです。
◆政治主導どこに
六月十六日の会期末が近づいてきます。重要法案を抱える鳩山政権与党ですが、会期延長はしないらしい。国会を閉じれば同二十四日公示、七月十一日投票の線で参院選日程が動きだします。
このスケジュールが固まったのはつい最近のことです。与党民主党は眠りから覚めたように、にわかに強引な動きに出ています。
例えば、与党の一角、国民新党が主導した郵政改革法案。小沢一郎民主党幹事長のひと声で、まともな委員会審議もないまま、週明け早々の衆院通過へ猛然です。暴走といっていいでしょう。
郵政労使への気配り、参院選集票戦略の一環、との指摘は、けっして的外れでありません。
国会前半を顧みれば、野党自民党の非力もあって鳩山新政権の予算成立はスムーズでした。前後して与党は鳴りをひそめます。
垂れ込める「政治とカネ」「普天間」問題の重い雲のもと、政権の迷走が続くうちに、重要法案が数珠つなぎで滞りました。
その結果、民主党政権の旗印であるはずの政治主導確立法案も、地域主権改革関連の法案も、先送り観測が定着してきています。
「指示待ち症候群だ」と国会事務局スタッフが嘆きます。省庁から出向の官僚もその中にいて、無駄に流れる時間に気をもむ彼らに与党の議員は「政治主導だ。口を出すな」と言ったそうです。
そうはいっても自分たちだけでは法案処理の優先順位もつけられず動けない。結局は最高実力者、小沢氏の「天の声」待ちなのでした。
そして審議日程が窮屈になっての採決の強行。これでは言論の府と呼ぶのもおこがましい。芯がなく、国民ないがしろのぶざまな国会、と批判されても仕方ないでしょう。
最終盤へきての攻防戦のなか、ようやく野党の陣営も足並みがそろってきました。
そうでないと困ります。国会を国民に近づけるのは野党の責務でもあります。政府・与党の横暴を見過ごしてはなりません。
微妙な物言いに終始しがちな公明党の山口那津男代表が「民意の集約、政策形成機能を軽視している」と、口先ばかりの政治主導を批判しています。
自民党の谷垣禎一総裁も「これではわが国の議会制民主主義が崩壊してしまう」と。
政権与党だった当時、同じせりふを野党民主党から聞いたのを思い出します。決戦の参院選へ思惑が先に立つ時期でもあります。
◆選挙至上を脱せ
でもここは与野党の双方に「選挙至上主義」を脱するよう促します。残る半月の会期を不毛な抗争でつぶしてほしくないのです。
社民党党首の閣僚罷免にも及んだ政権迷走で衆目を集める米軍基地問題こそ、充実審議でみんなの関心に応えよと、主張します。
そして小沢氏には、自身の問題に決着をつけて選挙指揮を、と。
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