【瀋陽=西村大輔】北朝鮮メディアが今月12日に「核融合反応に成功」と報道した直後から、中国当局が北朝鮮向けの支援物資の運搬を一部停止し、経済協力プロジェクトの凍結も検討している模様だと、中朝関係筋が明らかにした。金正日(キム・ジョンイル)総書記の訪中直後に新たな核開発を誇示するような動きを見せた北朝鮮に中国側は強い不快感を抱いているとみられ、独自の制裁措置をとっている可能性がある。
関係筋によると、中朝国境地帯の各地の貿易拠点で、定期的に北朝鮮に搬出されるコメやトウモロコシなどの穀物や化学肥料、医薬品、工作機械などの支援物資を積んだトラックの流れが、今月中旬から停止、または大幅に減少しているという。
また、昨年10月の温家宝(ウェン・チアパオ)首相訪朝の際などに合意した経済協力プロジェクトのうち、中朝国境の鴨緑江に新たに建設する橋などを除く多くの計画の凍結が、中国政府内で検討されているという。
北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は12日、核融合反応に成功したとし、目的を「安全な新エネルギーを得るため」と伝えた。だが、核融合反応は高度な技術と巨額の費用が必要で、国内向けのプロパガンダに過ぎないとの見方が根強い。
また、北朝鮮の関与が指摘されている韓国哨戒艦沈没をめぐり国際社会の風当たりが厳しくなる中、核技術の水準の高さを誇示して米韓を牽制(けんせい)しているとの見方もある。
だが、今月上旬に金総書記が訪中し、胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席との首脳会談で「朝鮮半島の非核化の目標を実現するために努力する」「6者協議を推進するために積極的に努力する」と確認したばかり。その直後の「核融合反応成功」との報道に、朝鮮半島の安定を最も重視する中国側は強い不満を抱いているとされる。
核実験などをめぐり国際社会から経済制裁を受けている北朝鮮にとって、中国は最大の援助国。中国から供給される大量の食糧や資源などの支援物資は、北朝鮮の生命線とされる。哨戒艦沈没事件を受けて韓国が南北交流・交易の原則中断を決めるなど、韓国の支援・協力も期待できない状況になっており、そのうえ中国の支援が細れば、北朝鮮は一層厳しい経済運営を迫られることになる。