阪神・金本知憲外野手(42)が、日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)との対戦を心待ちにした。28日、故障する右肩の治療に専念した金本は、チームとともに関西空港から札幌入り。オフに合同自主トレを行ったことで急接近した後輩を「今、一番燃える相手かもしれない」と評した。29日5番DHで先発する虎の主砲が、日本最高の右腕と熱い“再会”を果たす。
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心待ちにしていたからこそ、舌打ちもしたくなる。札幌行きの飛行機を待つ関西国際空港の待合ロビー。金本は心高鳴る「再会」を控え、複雑な胸の内を明かした。
「そりゃ、楽しみだったよ。お互い、最高の状態で対戦しようと、メールをしてたしね。でも、おれが万全の状態に持ってこれなかったな」
そう笑い飛ばした表情には、うっすらさみしさもにじんだ。メールの相手はダルビッシュ。昨年まで深い親交はなかった2人だが、ダルビッシュの“弟子入り”志願をきっかけに交流が始まった。
互いに所属するマネジメント事務所「エイベックス」を通じて、金本の連絡先を入手した右腕が昨年12月、「トレーニングを見せていただけないでしょうか」と願い出た。金本はこれを快諾し、1月8日に広島で「ビッグコラボレーション」が実現。金本がプロ1年目から肉体を作り上げた自主トレの拠点「アスリート」で約4時間に及ぶ合同トレーニングを行い、親交を深めた。
チームの垣根を越えて交流する自主トレの形は最近では珍しくないが、2人の場合は、投手と野手というポジションの違いや、18の年齢差など、すべてにおいて「異例の合体」となっただけに注目が集まった。ダルビッシュは今月15日、マツダスタジアムでの広島戦登板の翌日、1人でアスリートに出向き極秘でトレーニングを行っていた。指導した同ジムの平岡洋二代表に「金本さんの肩は大丈夫なんですか?」と容体を聞き、フルイニング出場断念の要因となった故障を案じていたという。
甲子園での前回カードで登板のなかったダルビッシュが29日阪神戦に先発する。現在4勝3敗ながら、防御率1・48と抜群の安定感を誇る日本ハムの絶対的なエースだ。一方、5番DHで先発する虎の主砲は、右肩腱板損傷からの復帰を目指し、日々リハビリを続けている。「万全でない」のは明らかだが、試合に出れば一切の言い訳を断ち切る男だ。だからこそ「絶好調同士でやりたかった」と悔恨の念が口をついた。
飛行機に乗り込む際、金本は言った。「今、日本の投手だったら、一番燃えるピッチャーかもしれない」。師弟となった2人の「再会」に、札幌ドームの18・44メートルが熱くなる。