最終文書採択 被爆者ら歓迎 限界指摘の声も
NPT再検討会議が閉幕した28日(日本時間29日)、県内の識者や現地で被爆証言などを行った被爆者や市民団体関係者らは、核廃絶への決意が盛り込まれた最終文書が採択されたことを歓迎する一方、廃絶への具体的な道筋が示せなかった会議の限界を指摘する声も出た。
2005年の前回会議の際に続き、渡米した被爆者の中村澄子さん(75)(三原市)は「決裂した05年のような事態にならず、全会一致で採択したことは前進といえる」と喜んだ。そして、「実体験として被爆証言できる人は年々少なくなっている。一刻も早く廃絶への取り組みを始めてほしい」と訴えた。
現地で核廃絶を求める討論会を開いた「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(71)は、「採択した文書は妥協の産物となってしまった感は否めないが、核廃絶に向けた行程表作成の動きも議論されるなど、成果はあった」とする。一方、全会一致という会議の枠組みについて、「参加者は限界を感じたのではないか。核兵器禁止条約に向けて、NGOなどが連携した新たな取り組みが必要」とした。
会議のNGOセッションで各国代表を前に核廃絶を訴えた秋葉・広島市長は、「核軍縮交渉開始の年次が盛り込まれなかったことは残念だが、加盟国が核兵器廃絶に向け、行動を開始することに合意した意味は大きい」とコメントした。
広島市立大広島平和研究所の浅井基文所長は、核保有国への義務を課した最終文書がまとまったことを評価。「被爆国の日本の消極的な姿勢は批判すべきところ。核兵器廃絶に向けて、日本が本気で取り組み、非同盟諸国、市民社会とスクラムを組めば、今後の展望も見えてくる」と指摘した。
(2010年5月30日 読売新聞)