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2010年5月25日 (火)

アフガニスタンの麻薬、ロシアへ流れ込む

Strategic Culture Foundation

2010年5月24日

アレクサンドル・バレンツェフ

国際麻薬・法律執行局のトップ、デビッド・T・ジョンソン国務次官補の、アメリカ国務省、国際麻薬国際麻薬管理戦略レポート(INCSR)によれば、アヘン用ケシ作物根絶という発想を否定すべきなのだという。

アフガニスタンにおける麻薬生産は、NATO軍による占領後、40倍に増えた。原料となる化学物質が、パキスタンやEU加盟諸国のいくつかを含む他の国々からアフガニスタンに輸入されている。ケシ栽培に対する大量資金注入は、多くの場合、農業活動への資金援助を装い、アヘン用ケシ栽培から、約400箇所の麻薬施設でのヘロインとアヘン精製、貯蔵、アフガニスタンやパキスタン麻薬市場への卸売りまでの、違法麻薬生産を構成する全工程をアフガニスタンが擁しているのだ。

現時点で、アフガニスタン内の純粋ヘロイン在庫は、3,000トンを若干下回るものと推測されており、アフガニスタン麻薬供給業者の収入は年間約30億ドルにものぼる。アフガニスタンからのヘロインで、国際麻薬マフィアは少なくとも年間1000億ドルを稼いでおり、この資金が、アフガニスタンのみならず、中央アジア全体、キルギスタン、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの組織犯罪を助長している。

麻薬ビジネスによって生み出された収入は、ケシ農園から麻薬常習者までを結ぶサプライチェーンの様々な部門を支配する犯罪集団の間で、山分けされている。アフガニスタンのケシ栽培業者たちは極端な貧困にあえいでいる一方で、ケシ畑所有者の大半はアメリカ、イギリスや他の西欧の民主主義国家で暮らしている。ケシ農園を根絶するのではなく、麻薬密売業者と麻薬密売組織のボスを追いかけようという、B・オバマ政権のアフガニスタン・パキスタン問題特使リチャード・ホルブルックの提案の背景を説明できるのは、ケシ畑所有者の幸福に対する配慮をおいて他にあるまい。アメリカと、いくつかのEU諸国は、アフガニスタンにおける麻薬生産問題を、2010年3月にウイーンで開催された国連麻薬委員会の第52回委員会での決議に載せようという、ロシア代表団の提案を拒絶した。

ロシアの法執行機関、ロシア連邦麻薬管理庁、ロシア連邦保安庁、警察は、アメリカ側の同等組織や、アフガニスタン政権の諜報機関に、麻薬精製施設や在庫、主要麻薬密売ルート等に関するデータを定期的に渡しているが、ほとんどなんの対策も講じられていない。繰り返す戦争と、アフガニスタン政権の悪名高いまずさの下では、アフガニスタン農民が、ケシ栽培から、合法的な農産物に転換するのを支援するため、国際機関から支給される資金は、通常ケシ栽培支援に使われている。2004年、カルザイ政権は、アフガニスタン人に、1ヘクタールのケシ作物根絶に対し、1,250ドルを支払ったが、平均的なケシ栽培農家は、1ヘクタールで16,000ドル稼ぐ(平均、年三回の収穫として)。

アメリカ軍はアフガニスタン南部での麻薬密売を邪魔することを好んでいるが、そこではいずれにせよ、戦争が継続する下で大規模麻薬生産は不可能なのだ。アフガニスタン北部では、アメリカは、アフガニスタンをタジキスタンと結ぶ道路と橋を建設しており、この経路は、ウズベキスタン、キルギスタンやアゼルバイジャンを経由して、更にロシアへと続いている。

アフガニスタン西部では、麻薬活動の蔓延は、イランによって完璧に封鎖されている。この地域の国境は、世界で最も厳重に防備されているものの一つで、深さ5メートルの堀、壁、更に300メートル毎に絞首台がある。国境はイラン軍の約60%が警備している。

アフガニスタンにおける麻薬の実態は、国連薬物犯罪事務所(UNODC)によって監視されているが、この国連機関が発表しているアフガニスタンのケシ栽培と、麻薬生産の数値は、怪しいほど控えめだ。UNODCは、アフガニスタン麻薬生産のわずか15%がロシアを経由する北部ルートを通って密輸されていると推測しているが、ロシアの法執行機関は、最近の急増後、北部ルートの比率は少なくとも35%にのぼっていると主張している。

麻薬は、あらゆる種類の輸送方法(自動車 70%、鉄道 20%、飛行機 10%)を用いて、ロシアに密輸される。密輸の大半は農業用必需品を装っており、密輸業者の生活を裕福にしている。カザフスタン税関は、基本的にアジアからの自動車は検査の対象としていない。

アフガニスタンを中心に関心を持っているアメリカ人専門家アンドリュー・F・タリー氏は、イランとロシアは、アフガニスタンからの“ヘロイン圧力”に直面しているとあからさまに語っているが、ロシアの統計データは、この見方を完全に裏付けている。違法麻薬流通と関連した凶悪犯罪の件数は、過去数年間、着実に増加している。2008年、国境検問所では、麻薬密輸で212人が逮捕され、ロシア連邦麻薬管理庁だけでも、麻薬卸売りのかどで、753人の外国人を拘留した。2009年の最初の三ヶ月で、国境検問所で逮捕された人数は、大半が中央アジアの共和国の国民だが、97人にも達している。

2009年秋、キルギスタンは同国の麻薬取り締まり機関を解体した。職権の大半は警察に、合法的な麻薬流通取り締まりは厚生省に移管された。麻薬密売組織のボスたちがもっぱら利用している、資金洗浄にまつわる、キルギスタン悪評を考えれば、このグローバルな改革は大いに警戒すべきものだ。

現行のカザフスタン法規では、ロシアとカザフスタン国境を越えて出入りする外国人や、国籍をもたない人々の流れを監視することさえ不可能なので、カザフスタンは、麻薬ビジネスの蔓延と戦う上でロシアの“奇妙な”同盟国だ。国境は長く(約7,600 km)、技術的装備は乏しく、ロシアへの麻薬密輸に対する障壁としてはほとんど役立っていない。

西欧の専門家たちは、莫大な利益を生み出す、アフガニスタンにおける違法麻薬生産と戦ってもアメリカの利益にはならないと、きわめて合理的に述べている。アフガニスタンで西欧他国籍軍と仕事をしている多くの企業にとって、麻薬ビジネスが、きわめて重要な収入源になっているということも考慮する必要がある。ヘロイン生産には膨大な量の無水酢酸、アセトンや、塩酸が必要だが、それをアフガニスタン国内で入手することは不可能であり、また個人的な仲介人では必要な量は調達不可能だ。最近、在アフガニスタン・ドイツ軍司令部は、在アフガニスタンNATOに洗濯とゴミ処理サービスをしているデュッセルドルフに本社を置く企業エコログを、麻薬密輸のかどで捜査した。このスキャンダルは現在ドイツで本格化している。

ヘロインの流れを、アフガニスタンからロシアへと注ぎ込む、あらゆる想像可能な条件が、現在、アフガニスタン国内に生み出されつつあることを認識すべきだ。こうしたお膳立てが一体誰の利益を推進するのだろうかという問いの答えを見いだすのは困難なことではなかろう。

記事原文のurl:en.fondsk.ru/article.php?id=3045

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5月25日、米軍による東京の山の手地域爆撃から65周年だそうだ。法要を営む方々や、悲惨な体験を描いた絵や体験談がテレビで紹介されていた。

安保条約の下で、沖縄、三沢、横須賀の基地から出て行く宗主国の海兵隊、戦闘機、空母が、同じことを、イラクやアフガニスタンやパキスタンで、毎日のように実行していることは、もちろん報じてくれない。非道な行為。当時日本はアメリカと戦争状態にあった。イラクやアフガニスタンやパキスタン、決してそうではない。

安保条約・基地が抑止力かどうかという議論以前に、安保条約・基地、少なくとも宗主国が一方的な殺戮支援をするための条約・設備であることに疑問の余地はないだろう。アメリカ軍基地が日本を守っているという証明ができなくとも、イラクやアフガニスタンやパキスタンの国民の殺戮には、大いに役立っていることは自明の事実。

暴力団に相撲の特等席切符を手配したとして、親方達が調べられているという。暴力団に便宜をはかると警察沙汰になるが、日本を不沈空母にしてアメリカ軍基地強化に協力すれば警察沙汰にならず、大勲位菊花大綬章をもらえる。そういうものだ。So it goes.

チャプリン『殺人鬼時代』主人公の簡潔な名セリフがある。

"One murder makes a villain. Millions a hero. Numbers sanctify"「一人殺害すれば犯罪者になるが、百万人殺害すれば英雄になる。数が殺人を神聖化する。」

先日NHK-BSの『フォグ・オブ・ウォー』でマクナマラをみながら、このセリフを思い出した。マクナマラ、カーチス・ルメイが推進した東京空襲にも深く関与していた。

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コメント

「暗いニュースリンク」ブログさんを見て貰えば判りますが、既にアメリカの南、メキシコ国境方面からの純粋ヘロイン流入が激しく、余りの純度に死人迄出てるらしいです。
鼻吸引も注射も死者が。
大変な世界展開ですが、主要な派兵国筆頭てか、現役麻薬王のお膝元なので当然ですね。

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