大牟田市本町3丁目の旅館「南風荘」の経営者江崎京子さん(79)が殺害された事件から1日たった29日、近隣住民や知人、同業者たちは、気さくで仕事熱心だった江崎さんを惜しむとともに「早く犯人を逮捕して」と不安を募らせた。
南風荘は、同市の玄関口ともいえるJRと西鉄の両大牟田駅の西口近くで約50年間営業を続けてきた。
しかし、事件発生後、旅館の出入り口は青いシートで覆われ、近隣住民や駅利用者たちは、心配そうに捜査の様子を見入ったり、聞き込みに応じたりしている。
駅西口で、客待ちをするタクシー運転手の男性(56)は「江崎さんは、いつもにこにこしてあいさつする気さくな人だった」。現場を通った女性(61)は「ここで殺人事件が起きるなんて信じられない。犯人を早く逮捕してほしい」と顔をこわばらせた。
西口近くにある旅館の女性経営者は「料金支払い時に客とトラブルになることは多い。だから前金制にして、予約の人だけを宿泊させている。泥酔者や初めての人は泊めない」と語った。
江崎さんは、夫や長女、孫と5人暮らしで、ほとんど1人で旅館を切り盛りしてきたという。カラオケや日本舞踊を趣味にしており「いつも朗らかなおかみ」として評判だったという。
江崎さんと仲がよかった女性(78)は「客をもてなすのが生きがいのようだった。『孫娘が嫁にいくまでは続けたい』と言っていたのに」と声を詰まらせた。「旅館があるから」と、地域の老人クラブの旅行を断ったこともあるほど仕事熱心で、今月上旬にあった旅館組合の総会にも元気に出席していたという。
旅館そばに住む男性(78)は「大牟田の人口が減っていく中、客も少なかったろうに頑張っていた。まさか殺されるなんて…」と悔しげに語った。
=2010/05/30付 西日本新聞朝刊=