ニュース特報

2010年05月26日号

【経済ヤクザ】
本誌編集長が「後藤忠政被告の2審逆転、執行猶予付き有罪判決」を解説する


●事後審の鏡
 後藤被告らに対する1審判決は08年3月7日に無罪判決(求刑懲役4年)が出された。検察側が判決を不服として控訴、控訴審初公判が開かれたのは実に1年8ヵ月たった09年11月13日であった。
 私はこれだけ長期間にわたっていることは「東京高裁第6刑事部が徹底的に1審無罪判決の思考構造に疑問を抱いているな」、後藤氏は逆転有罪だなと見立てた。

 そもそも、後藤被告らは05年2月、実際には所有権の一部しか持っていなかった不動産会社「フェニックス・トラスト」とビル全体の売買契約を結び、後藤組関連企業「赤富士」に虚偽の移転登記をした、として起訴された。

 被告弁護側は「ビルの所有権がないとは認識していなかった」と前置きし、

「登記は真正で罪にはならず、後藤被告は13億円の大金を払って問題のある物件を買わされた被害者だ」と主張した。

 1審の福崎伸一郎裁判長は、被告弁護側の主張を認め
  • @ 売買契約、後藤・坂上氏=雅夫氏、後藤氏の金融・不動産に関するパートナー、1審無罪、2審で別事件も併せ、懲役2年6月、執行猶予4年の判決=側の所有権を認めた。
  • A「売り主が無権利だと知っていて、大金を即時に支払うことは通常考えにくい」
  • B「後藤被告が取引の詳細な説明を受けていたとは考えられない」
  • C 検察側の転売目的との主張についても「契約時に組側が転売先を確保したと認める証拠はない」
 と認定、「後藤被告側がビル購入に13億円を支払っている経緯などから「両被告の弁解には相応の合理性があり、不実の登記をする認識があったと認めるには合理的な疑いが残る」と結論づけ。無罪判決を出した。

●検察側は控訴
 検察側は控訴した。東京高裁は控訴趣意書に「あれ」という箇所を随所にあることを見つけたと思う。少なくとも1審の無罪は認められないという心証を持ったと思う。

●私が高裁の裁判官でも
 私も同じように考えた。

 1審は「契約時に組側が転売先を確保したと認める証拠はない」と認定したが、1審判決直後でも30億から35億なら現状有姿のまま買い取り希望者はいた。だから「契約時に組側が転売先を確保したと認める証拠はない」は誤判だ、13億で仕入れ仮に35億で売買が成立したとしても、紛争付きで20億の転売益が出る計算となる。
また、坂上被告は法律に精通し、後藤被告の法律・金融参謀、真珠宮ビルの所有権がどうなっているか、法的紛争はどうなる見通しか、などを検証、後藤被告に報告しないわけがない。
 1審の「後藤被告が取引の詳細な説明を受けていたとは考えられない」も誤判である。

 私が裁判官でも1審判決を破棄し、有罪判決を出す。
 「ビルの所有権がないとは認識していなかった」「登記は真正で罪にはならず、後藤被告は13億円の大金を払って問題のある物件を買わされた被害者だ」という主張がおかしい。後藤氏は我が国でも10本の指に入る大組織。後藤組の組長であった。

●東京高裁の逆転有罪判決
 東京高裁は
  • @「転売益が得られる見込みがあり、虚偽と知りながら13億円を支払った」と認定した。
  • A「坂上被告は問題のビル売却に絡む民事訴訟の資料を通じて、売り主が所有権の一部しか持っていないと認識していた」と指摘。「坂上被告がこの事情を後藤被告に説明していないとは考えられない」「後藤被告が取引の基本構造を知らされていないとするのは不合理」と判断した。
 私の考えとほぼ同じ思考だ。

●私の解説
 暴対法が施行され、改正が重ねられている昨今、後藤氏ほどの大物に無罪確定させることはないと思わないのは間違いである。まして経済ヤクザの代表的人物で袴田被告の無罪を訴える映画に3億円も拠出するほどの成功者に1審の無罪を支持する判決を事後審が認める訳がない。1審裁判官は事件物不動産の基本構造がまるっきり分かっていない人だった、と私は思う。

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