司法の広場

2008年02月14日号

【世相の裏表を斬る】
田中森一被告上告棄却の意味と後藤忠正被告に対する判決の先にあるもの    M・S


●許永中と共に
 許永中被告と共に上告中の田中弁護士の有罪が確定した。
裏弁護士を自称する田中弁護士が書かれた「反転」が多数の読者を得て田中弁護士もマスコミに露出する機会が増えていた矢先の最高裁の決定である。
一部には秋に出るといわれていた決定が春まだ遠い今でたことはその内容は予想されていたとおりとはいえ少し意外であった。

 田中弁護士は自らも著書で認めているとおり小谷受刑囚とは検事時代からそれが情報収集か否かは別にして面識があり検事退官後は宅見組長らと深い関係を持ち許被告と共に逮捕された人物である。
その事件の真実は神のみが知るわけであるが、筆者からみれば特捜検事の地位を私物化した人物ではないのか。
著書で書かれていた苅田町の事件で検察に不満を持ちやめた人物がやめたとたん関連派閥の顧問的立場に立つという行動原理は摩訶不思議である。
その著書で稲川会の石井氏との交遊が意図的に削られていると感じるのは私だけであろうか。

●来月後藤組組長の判決がある。
 その前にこの決定が出たことはある意味感慨深い。
田中弁護士、後藤組長は弁護士としてヤクザとして新潮流ということで共通する。
後藤組長ほど自ら前線に出てヤクザ家業を実業的に行った人物はほかにいない。
そして田中弁護士もその仕事場は法廷でなく自ら裏舞台の裏弁護士ということで多くの収益を上げてきたわけである。

 体制を批判することはもとより必要である。
現権力体制が絶対的善であるはずなく常に批判されるべきであるが、ヤクザという体制の隙間に生息するはずの存在が政治屋を金で買い刑事を金で買い、登記制度も無視し、上場企業を通じ銀行の金まで使い、殺人まで起きた事件物件に関与し、元高検検事長の関係にまで金を貸し滌除屋行為に手を貸しながら、逮捕されれば5億の金を用意し弁護士を多数使役し無罪をとるために一部マスコミまで使役するのを体制に批判的というだけで社会は支持するのであろうか。

田中弁護士の生き様も裏弁護士というのはたとえば証拠のねつ造という行為とどう違うのであろうか。
この両名に共通するのは自らが社会を動かせるという自負である。

 しかし特捜検事の権力は社会が与えたものでその行使には限界があり、ヤクザは狭間で生きる者で昼間表通りを歩くべきでないのである。
この素朴な事実を理解できない両者とその周辺にどういう判決が出るかと思っていたらタイミングよく後藤判決の直前に田中実刑が確定する。

サリアジャパンという不動産屋はいま弘道会、まえは後藤組のフロントといわれている。
それと共同地上げをメンテルス六本木で行っていたのが菱和社である。
これは関係者の間では周知の事実なのである。
その西岡社長が無罪判決を受けたことは不思議以外何物でないが、事実を小さなテーブルにのせる刑事裁判の構造で見落としがちな常識がテーブルにのっていなかったというほかない。

 菱和社とABC不動産は車の両輪である。
その上場は決算書をどう作るかで決まった時代があったのである。

 いまABC社の社長の逮捕情報が駆けめぐっている。
サリアジャパンの資金調達と商工ファンドの関係も噂されている。
田中判決の意味は大きい。
後藤判決はどう出ようと世間はこれから彼らのビジネスの実態を知るだろう。
ICFに絡んだ弁護士たちの生き様もこれから明らかになる。
これらの事件が低層で深く関連してるのを社会は知るべきだ。


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