閉鎖の木瀬部屋力士、北の湖部屋移籍へ…２９日理事会で決定

　木瀬親方（元幕内・肥後ノ海）が昨年の大相撲名古屋場所で暴力団へチケットを手配した疑惑により日本相撲協会の理事会で閉鎖処分を受けた木瀬部屋の力士らが、同じ出羽海一門の北の湖部屋へ移籍することが２８日、分かった。複数の同一門関係者が明かした。理事会では力士を同一門預かりとし、一門内の他の部屋への移籍を求めていた。協会は２９日にも持ち回り理事会を開き、承認する。

　複数の出羽海一門関係者によると、移籍は処分が決まった２７日中に木瀬親方が受け入れを願い出て、北の湖親方が了承して決まったという。渦中の木瀬親方は、この日は東京・墨田区の部屋から姿を現さずも、２９日にも協会へ移籍を申請し、持ち回り理事会での承認を受ける。

　移籍先が北の湖部屋に決まった背景には両部屋の深いつながりがある。出羽海一門は理事に武蔵川理事長（元横綱・三重ノ海）、出羽海事業部長（元関脇・鷲羽山）、北の湖親方の３人を送り出しているが、木瀬親方は同じ三保ケ関部屋出身の北の湖親方を支持。さらにここ数年は両部屋で出げいこを重ね、力士育成への考えも一致していたことも大きかった。

　幕内・北太樹ら力士２０人の北の湖部屋は今後、近年の角界にない大所帯になる。木瀬部屋の力士は十両・臥牙丸ら２７人おり、合わせて４７人。木瀬親方は北の湖部屋の部屋付き親方になる。同部屋にも山響親方（元幕内・巌雄）と小野川親方（元幕内・北桜）がいるため、師匠の北の湖親方を含め４人で指導にあたる。

　北の湖親方はこの日、木瀬部屋の移籍について「まずは部屋の内情を聞いてみたい」と前向きな姿勢を見せたが、即答は避けた。０６年６月には二十山親方（元大関・北天佑）の死去に伴い、二十山部屋の力士の転籍を受け入れた経験がある。再び別の部屋の力士、いわば生まれが違う弟子を５０人近くも育成することには難しい状況も予想されるが、北の湖親方は「私はそういうことは気にしていません。大切なのは力士の将来です」。優勝２４回の大横綱でもあった前理事長の力士を思う心が、窮地の木瀬部屋を救う。