ここから本文エリア 福島自立更生センター問題 2氏に聞く2010年05月29日
福島自立更生促進センターの推進側と反対派の「溝」。その理由は何なのか。開所に反対する住民団体「福島市街地周辺地域の安心を守る住民の会」の熊坂良太代表(32)と、福島保護観察所の南元英夫・統括保護観察官(42)に双方の思いを聞いた。 ◎反対派「再犯のリスク 説明ない」 ――開所反対の理由は 犯罪にもっとも慣れていない子どもたちが、再犯被害にあう直接的なリスクにさらされる可能性があり、あの場所での開所には納得出来ない。住民を交え、県内での再犯率を下げるためにはどの場所がいいのか議論すべきだった。例えば、刑務所内に同じ機能を持つ施設を作ることだって考えられるはず。 ――保護観察所側は「多くの理解が得られたと考えている」と発言している 再犯のリスクを示して理解を求めるならまだしも、リスクへの説明はこれまで全くない。本当に理解した人はいないのではないか。2009年6月開所の北九州自立更生促進センターでは、わずか数カ月で無断外泊者が出ている。 ――京都や福岡に比べ、反対運動が遅かったのでは 現在の反対運動の中心になっている学校関係者に最初の説明会が行われたのは、年6月ごろで、建物完成の直前だった。京都や福岡で反対運動が起きたので説明会を控えていたとしか思えない。そもそも反対運動がないから理解が得られたという考え方がおかしい。 ――「依存性の進んだ覚せい剤事犯者」や「性犯罪者」を入所させないなど運用方針が変わったが 住民にとって象徴的な犯罪でしかなく、反対をやめる理由にはならない。薬物中毒も、保護観察所は「依存性の進んだ」の定義を一切示していない。いくらでも自由に解釈が出来てしまう。それに、どんな条件も将来にわたって担保される保証がない。これまで法務大臣や担当が変わるたびに、保護観察所側は「前任者は前任者」と言ってきた。 ――先月26日の告示でセンターは事実上開所したが、今後の運動に変化は ◎推進側「独自の入所基準 守れる」 ――「文教地区」への立地に大きな反発がある 職を探しやすい市街地にあることが更生保護施設にとって必要。登下校の際なども子どもの数が少ないより、多い方が「衆人環視」の役割も果たし、再犯抑止の効果も高いと思っている。 ――8万を超す反対署名が集まったのに、なぜ福岡、京都のように「凍結」でないのか 反対運動が起こった時期が大きい。京都と福岡の反対運動は「計画発表直後」で、施設完成間近に反対運動が起こった福島とは違う。 ――「性犯罪者を入れない」など福島独自の入所基準は将来も守ることは可能か 現実的に可能だ。福島に完成するまでには独自の経緯があったわけで、将来も大切にしたい。長年きちんと運用していくことが必要だ。 ――すると「民間で対応困難な人」を受け入れるセンターの目的はどうなる 需要に比べ全国の民間施設で受け入れてもらっている人は少ない。質的にも集団生活になじめる人だけだ。そういう意味では、性犯罪者を入れない施設でも存在意義があいまいになることはない。 ――開所後の運営状況をチェックする「運営連絡会議」には反対派は入れないのか 開所反対の意見の人にも入ってもらいたいが、会議では運営中止や場所を移す議論は絶対にしない。 ――安全対策の中身は 防犯灯の設置、民間協力者によるパトロール、全地球測位システム(GPS)機能付き携帯電話など。広い意味では「仕事がなく周囲をうろうろする人」を少なくするためなので、施設の存在や処遇そのものが安全対策だ。 ――反対が強い中での開所は入所者にマイナスでは 入所者にはむしろそういう状況を知り、自立更生することが、周りからも信用されると感じてほしい。反対意見がある一方、協力してやろうという人もいる。(聞き手・小寺陽一郎)
マイタウン福島
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