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2010鳩山政権

〈日米声明、福島氏罷免など 鳩山首相記者会見の要旨〉

2010年5月28日23時40分

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写真臨時閣議を終え記者会見場に入る鳩山由紀夫首相=28日午後9時、首相官邸、橋本弦撮影

 鳩山由紀夫首相は28日夜、首相官邸での記者会見で、同日発表した日米共同声明の内容や福島瑞穂・消費者担当相を罷免した理由などについて語った。発言の要旨は以下の通り。

     ◇

 本日は国民の皆様に、日本国民全体の安全と生活に直接かかわるご報告をさせていただくため記者会見を開いた。

 さきほど政府は普天間の基地問題と沖縄県民の負担軽減について閣議決定をした。まず冒頭、昨年秋の政権交代以来、この問題に取り組んできた思いを一言述べる。

 現在の日本は歴史的にみて大きな曲がり角に立っている。内政、外交ともにおそらくは数十年に一度の激動期にさしかかっている。沖縄における基地問題もそうした視点で解決策を見いだす努力が必要だと私は考えた。

 日本の国土のわずか0.6%の沖縄県に駐留米軍基地の75%が集中するという偏った負担がある。騒音などの負担や基地が密集することの危険などを沖縄の皆様方に背負っていただいてきたからこそ、今日の日本の平和と繁栄があるといっても過言ではない。

 しかし、多くの日本人が沖縄の、あるいは基地の所在する自治体の負担を忘れがちになっているのではないか。

 沖縄は先の大戦でも最大規模の地上戦を経験し、多くの犠牲を強いられた。ここでもまた沖縄が本土の安全のための防波堤となった。

 戦後はアメリカの統治下でのご苦労、返還後も基地の負担を一身に担ってきたご苦労を思えば、現在の基地問題を沖縄に対する不当な差別であると考える沖縄県民の気持ちは痛いほどよくわかる。

 しかし、同時に米軍基地の存在もまた、日本の安全保障上なくてはならないものだ。日米安保条約改定から50年の節目の年にあたって、半世紀余にわたる日米の信頼関係をより緊密なものにしていくためにも、戦後はじめての選挙による政権交代を成し遂げた新政権の責務として、大きな転換を図れないか、真剣に検討した。

 普天間基地の危険をどうにかして、少しでも除去できないか。沖縄県民の過重な負担や危険を少しでも具体的に軽減する方策はないものか。普天間の代替施設を県外に移せないか。他の地域で沖縄の負担を少しでも引き受けて頂けないか。一生懸命努力をしてきた。

 他方、アジア太平洋地域には依然として不安定な不確実な要素が残っている。最近における朝鮮半島情勢など、東アジア情勢は極めて緊迫している。日米同盟が果たしている東アジアの安全保障における大きな役割をいかに考えるか。米国とは安全保障上の観点に留意しながら、沖縄の負担軽減と普天間の危険性除去を実現するためにぎりぎりの交渉を行ってきた。海兵隊を含む在日米軍の抑止力についても慎重な熟慮を加えた結果が、本日の閣議決定だ。

 確かに私が当初思い描いていた沖縄県民の負担や危険性の抜本的な軽減、あるいは除去に比較すれば、この閣議決定は最初の一歩、あるいは小さな半歩にすぎないかもしれない。しかし私たちは前進をしなければならない。少しずつでも日本の安全保障を確保しながら、沖縄の負担を軽減する方策を探っていかなければならない。

 普天間の問題については、地元、連立、米国、この3者の理解を得て、それぞれがこれでいこう、という気持ちになることをこの5月末に目指してきた。米国との間では、今朝オバマ米大統領と電話で話をし、今回の合意に関し、21世紀にふさわしい形で日米同盟を深化させることで一致をし、今後とも沖縄の負担軽減に日米で協力したい旨、強くその意志を表明し、日米相互で努力することになった。

 残念ながら、最も大切な沖縄県民の皆様方のご理解を得られるには至っていない。また連立のパートナーであり、社民党党首の福島大臣にも、理解をいただけなかった。結果として、福島大臣を罷免せざるを得ない事態に立ち至った。こうした状況のもとで、本日閣議決定に至ったことは誠に申し訳ない思いでいっぱいだ。

 本日決定した政府案、この一歩がなければ、この先、基地周辺の住民の危険性の除去や県民の負担の軽減のさらなる前進はかなわないと確信をしている。今後もねばり強く、基地問題の解決に取り組み続けることが自分の使命だ。沖縄の負担軽減のためには、全国の皆様の理解と協力がなによりも大切だ。

 政府は昨年9月の発足以来、普天間飛行場の代替施設に関する過去の日米合意について見直し作業を実施した。鳩山政権として、県外の可能性を米国に投げかけることもなく現行案に同意することには、どうしても納得ができなかった。昨年12月、新たな代替施設を探すことを決めた。

 その後の5カ月間、県外に代替施設を見つけられないかという強い思いのもと、沖縄県内と県外を含めて四十数カ所の場所について移設の可能性を探ってきた。

 しかし、大きな問題は、海兵隊の一体運用の必要性だった。全体をひとくくりにして本土に移すという選択肢は現実にはあり得なかった。ヘリ部隊を地上部隊などと切り離し、沖縄から遠く離れた場所に移設するということもかなわなかった。

 国外、県外は困難との結論に至ってからは、沖縄県内の辺野古周辺という選択肢を検討せざるを得なかった。自分の言葉を守れなかったこと、それ以上に沖縄の皆様方を結果的に傷つけてしまうことになったことに対して心よりおわびを申し上げる。

 代替施設を決めない限り、普天間飛行場が返還されることはない。海兵隊8千人などのグアム移転や、嘉手納以南の米軍基地の返還も、代替施設が決まらないと動かない。この現実のもとで、危険性の除去と負担軽減を優先する、それが今回の決定だと理解願いたい。

 新たな代替施設の詳細な場所や工法などについて、環境面や地元の皆様方への影響などを考慮して計画をつくっていく。沖縄の方々、特に名護市の多くの方々がお怒りになることは重々分かる。それでもお願いをせざるを得ない。

 今回の決定は、米軍基地を巡る沖縄の現状を放置するということではない。沖縄で行われている米軍の訓練を県外に移し、沖縄の負担軽減と危険性の除去の実をあげていく。そのためには、他の自治体に米軍等の訓練受け入れをお願いしなければならない。

 また、徳之島の皆様方にご協力をお願いすることも検討することとなった。今後もよく話し合っていく。

 最後に、今回の日米合意による、新たな負担軽減策について。県外への訓練移転のほか、沖縄本島の東方沖海域の米軍訓練区域について、漁業関係者の方々などが通過できるよう合意をした。基地を巡る環境の問題についても、新たな合意をめざして検討をすることにした。

 政府は普天間飛行場返還のための代替施設の建設と、沖縄の負担軽減策の充実に向けて邁進(まいしん)していく。どんなに時間がかかっても、日本の平和を主体的に守ることができる日本をつくっていきたい。

 日米同盟の深化や東アジア共同体構想を含め、私たち日本人の英知を結集していこうではありませんか。沖縄の基地問題の真の解決もその先にあると私は思っている。

 ――決着と言えるのか。

 米国の理解は得られたが、沖縄の理解をいただくには至っていない。精いっぱいの努力をしていかなければならない。連立与党である社民党の福島党首を罷免せざるを得なかった。痛みに堪えない。

 ――なぜ罷免したのか。

 根本的な部分において、基地問題に対する考え方の違いがあった。日米の合意がなされた以上、政権の責任においてしっかりと守らなければならない。そのなかで署名がされないということであれば、罷免せざるを得ない。

 ――3党連立の枠組みに変化はないか。

 私としては連立を維持していきたい。社民党が望むならば、新たに閣僚に入っていただくことも視野にある。

 ――なぜ5月末を期限にしたのか。

 あまり延ばすことは不誠実に映る。参院選前までに決着がつかなければ、最大のイシュー(争点)になる可能性がある。さらに、(11月の沖縄県)知事選の前に申し上げておくことが責務ではないか。

 ――移設完了のめどは。

 環境アセスの問題もあるが、できるかぎり2014年までに完了できるようなスケジュール感で進めたい。さらに新たな地域に対して協議をしていきながら、できるだけ早く訓練の分散を図りたい。

 ――県外に移設できる可能性はどれぐらいあるか。

 この半年、そのことを求めてきたが不調に終わった。しかしこれからも、訓練の分散を含めた県外への移設を考えて、少しでも沖縄の皆さんの負担を減らす努力が必要ではないか。どれくらいのパーセントがあるかを申し上げるつもりはないし、すぐにできるという話ではない。

 ――約束が守られなかったことに不安感がある。

 首相の実行力が十分に示されていないと思われても、仕方がない。

 ――政治主導の反省点は。

 試行錯誤のなかで十分に機能しなかった部分がある。政治家が片意地張りすぎて、全部自分たちが考えるんだという発想で、必ずしも十分、優秀な官僚たちの知識、知恵を引き出せずに行動してきたきらいがあるかもしれない。

 ――検討経過の情報管理については。

 すぐに公表できない情報がかなり途中の段階で漏れてしまった。秘密を守るという機運が必ずしも十分に働いてこなかった。極めて不徹底な部分があった。政権交代の難しさかなと思っている。私自身の不徳の致すところかもしれない。新政権に対して一致して協力していかなければならないが、必ずしもそのような思いでないところから情報が漏れることもあったのではないか。もっとみんなを信頼させる度量の深さが私、あるいは閣僚に求められている。

 ――なぜ、沖縄に海兵隊が必要なのか。

 米軍がパッケージとして日本に存在していることの意味合いが大きい。その一部を外して機能を遠い県外に移すということは極めて難しい。

 ――首相の「腹案」とは。

 細かいところまで決めていたというわけではない。

 ――安全保障についてどう考えているのか。

 自衛隊の自衛力を含めて日本の安全をどのように日本自身が守れるようにしていくか、考えていく必要がある。トータルの安全保障の議論が必ずしも新しい政権のなかでできあがっていない。

 ――国民に今、何か約束できることはあるか。

 新しい公共をもっとご理解いただきたい。税額控除の問題も含め、民の力を最大限引き出していけるような新しい社会を作り上げていきたい。

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