僕は、この集団に関わりもなければ関心もなかった。噂だけは聞いていたし、スタッフからの企画も上がっていた。でも取り上げるつもりはなかった。それだけ軽視していたのだろう。しかし、ユーチューブで在特会の映像を見て、一挙にある種の感情が僕を支配した。

  その映像では、京都の朝鮮小学校に行って、拡声器で「ゴキブリ!」「チャンコロ」と叫んでいた。これは噂通りだわ、と思った。また違う動画では車椅子に座った障害者の方に向かって、桜井誠なる会長が怒鳴り上げていた。「朝鮮へ帰れ」だかなんだか。さらに頭痛がしたのが、「在特会」のセミナーで老人の元日本兵をゲストで招いていた。初めは大人しく聞いていたのだが、老人が「韓国もアジアも一つになってアメリカに対抗しなければいけない」というような事を言った。とたん、小学校の騒がしいクラスのように室内の参加者が騒ぎ出した。

  で、どこかの若造が「ねえねえ、お爺ちゃん、陸軍?」とタメ口で聞いてきた。老人は耳が遠いらしく何度も聞き返す。ようやく、「ああ、陸軍です」と答えていた。するとまた別の今度は中年らしき男性が詰め寄って、「玄洋社知ってる? 頭山満は?」と矢継ぎ早に質問する。それも敬語は使わない。老人は知らないと答えた。中年男性は鼻で笑って「知らないなら話にならない」とか言いながら席に戻った。

  話しにならないのはお前だろう。僕は頭痛がするほどの怒りを覚えた。だったら、玄洋社や頭山満の集会に行った事があるのか、この男性は。僕は勉強の為に全日本愛国者団体会議などの集会に出たことがある。右翼思想ではないが色々な知識を吸収するためだ。この老人が、頭山満を知らなくて何が悪い? 五常という言葉がある。仁・義・礼・智・信。日本人なら、礼儀くらい守れ。いや、日本人でなくともだ。国の為に命を張ってきた老人に対して、命どころか体もかけた事もないガキが「お爺ちゃん、陸軍?」だぁ。こいつらおかしい、と真面目に思った。

  右翼と間違える人もいるようだが、これは集団ヒステリーが行動に出たものだろう。元々はネットで活動していたのが外に出るようになったので、「行動する保守」だとか言い出している。良かったね、行動できて。何十年も右翼活動をやってきて、体をかけてきた人たちと話すが、「全然違う」と言う。勿論そうだろう。今月号でも掲載するが、彼らは反撃できない相手に強気に出ていくというのが特徴だ。在日特権というなら特権を最も受けているのは米軍基地だ、というのは一水会の木村三浩代表の言である。尤もだ。米兵が日本女性に乱暴し逃げ得になっている現実はどうなる。

  こういう手あいを朝日新聞がゆるーく取り上げるからつけあがる。外国人参政権認めないとか日の丸を愛せよ、とかいう主張は良しとしよう。それで、行動が伴っているかというと全然伴っていない。日本人なら恥を知れ。いや、日本人でなくても、である。少なくともゲストにわざわざ招いた元日本兵の老人に対して、卑しくも礼節を持って応対せよ、と言いたい。「行動する保守」でなく「行動するネット右翼(右翼に失礼だが)」というのが彼らの正体であろう。

(文=編集部•久田将義)