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kojitakenの日記

2008-02-06 社会民主主義と陸続きにあった70年代リベラル

社会民主主義と陸続きにあった70年代リベラル

新自由主義と陸続きにあった80年代都市リベラル - Munchener Brucke にて、「私は中高生時代に左翼教師の洗礼を受けて、左翼的思想に染まり、90年前半20歳前後で新自由主義の洗礼を浴び、2003年頃から新自由主義に疑問を持つようになった」とあるが、私も高校時代に政治経済の教師に影響を受けた口だ。ただし、私は「Munchener Brucke」の管理人・kechackさんよりは一世代上に当たる。70年代末に、憲法9条靖国問題有事立法問題などについて、授業で「左寄り」の意見を吹き込まれていたのだが、その頃、イギリスサッチャー政権が成立した。

当時、朝日新聞の論説顧問を都留直人氏が務めていた。また、森嶋通夫氏の「イギリスと日本」(岩波新書)が話題になっていた頃でもあった。新自由主義政権のはしりは、1973年の「9・11クーデター」で成立したチリのピノチェト政権だそうだが、先進国で最初に新自由主義政策をとったのがサッチャーだった。もちろん、当時は「新自由主義」なる用語はなかったが、朝日新聞政経の教師もサッチャーに対して批判的だったし、私もサッチャーやその後相次いで登場したレーガン中曽根康弘らに対していずれもネガティブなスタンスをとった。これは、経済政策よりむしろ政治思想面での彼らのタカ派的政策への嫌悪のウェートが重かったのだが、規制緩和などの新自由主義政策に対しても、批判的な視座が当時の朝日新聞など左派メディアにおける主流だったと記憶している。

朝日新聞は、90年代前半の「政治改革」の頃から徐々に変節していったのだろう。朝日には、石川真澄という記者(2004年没)がいて、私はこの記者が好きだったのだが、石川は政治改革に異を唱え、特に小選挙区制を厳しく批判した。しかし、当時テレビ朝日の「サンデープロジェクト」などで、政治改革批判者には「守旧派」とのレッテルが貼られた。皮肉にも、小泉純一郎政治改革にはいたって消極的で、中選挙区制の維持を唱えていた。そして、朝日新聞社内で、石川真澄の主張は主流から外れていき、「政治改革」に理解を示す論調が朝日の社論となった。

だから、「朝日系というのは真の左翼でなくて、80年代都市リベラルの系譜で、新自由主義と親和性がある」という「Munchener Brucke」の指摘には、それこそ違和感を感じる。朝日はもとからそうだったのではなく、変節したのだというのが私の意見である。テレビ朝日は、朝日新聞よりも先に変節した。ただ、左派は政治思想には敏感だが、経済思想には鈍感なところがあるので、朝日新聞の変節がさほど問題にならず見過ごされてしまったのではなかろうか。

かつては、朝日新聞岩波書店の言論は、社会民主主義と陸続きにあったように思う。

kechackkechack 2008/02/06 19:32 80年代当時若輩者であった私が、社会全体の空気を正しく解していたとは思いませんが。
 森嶋先生は私の姻戚でして、幼少時イギリスに住んでいた頃は大変お世話になりました。私が物心
付いた頃には亡くなられてしまい直接お話を伺うことはできなかったのですが、瑤子夫人は来日
する際に何度かお目にかかりサッチャリスム等について、お話をさせていただいたことがあります。
 日本は政治の世界では西欧より周回遅れなのは周知の通りだと思います。社会主義の劣勢になり
左派政党がようやく西欧型社民主義に軸足を移そうとしていた矢先、西欧では社民主義が守勢に
立たされており、新自由主義を忌諱する人々の間で、高負担、財政依存しない新たなモデルを
構築しなければ新自由主義の攻勢に負けてしまうという危機感が芽生え始めていた頃だと思いま
す。もちろん社民主義への期待もまだ高かったですが。
 80年代の日本は、社民主義も新自由主義も一般的に正しく理解されていなかったと思います。
ただ公共事業型大きな政府の自民党と社会福祉型大きな政府の社会党が対峙し、都市リベラル層
は「公共事業を減らしてその予算を福祉に回して欲しい」という気持ちで後者を支持していたの
だと思います。山口二郎教授のように公共事業による地域間格差是正も評価し、何かを削るので
なく堂々と社会福祉のために増税しろという真の社民主義者は昔も今も少数だと思います。
 新自由主義者の「税金の無駄遣いやめろ」というメッセージは、都市リベラルに甘い期待を誘っ
たのですよ。私もそうでした。kojitakenさんは賢いから騙されなかっただけで、多くの都市リベラル
層は騙されたんです。新自由主義が国民に自立を求め、社会保障を減らすのを是とする思想だと正しく
理解できている人はほとんどいなかったんですよ。
 では知識を得ていたはずの左派メディアも騙されていたかというとそうではないと思います。ただ
朝日系メディアは非自民政権樹立に協力的であったことからわかりように、新自由主義は古い自民党
よりマシと考えていたと思います。これを以て転向と言うのかもしれませんが。
 ただ朝日等の左派メディアが新自由主義そのものを支持したことがあるかと言うと、それは一度も
ないと思います。ただ社民主義限界説を信じ、社民主義に回帰することもなく漂っていたと思います。
90年代末に「第三の道」が提示され、これに飛びついた左派メディア、知識人は多いですね。

kojitakenkojitaken 2008/02/07 22:11 kechackさん、
森嶋通夫さんとご親戚とは、うらやましい限りです。
私にとって特に思い出深いのが1977年からの3年間で、イタリア共産党が「ユーロコミュニズム」を牽引し、日本には社会市民連合が誕生するなど、左翼の社民化が進みました。社会党の内紛を報じる当時のマスコミは、おおむね江田三郎氏に好意的で、教条主義的な社会主義協会に対しては批判的だったと記憶しています。
エントリ本文で述べた政経の教師は、その頃既に始まっていた右傾化の影響を受けた生徒に「アカ」呼ばわりされていましたが、教師自身は「私は社会民主主義者だ」と明言していましたし、私自身江田三郎のシンパでした。新自由主義者の主張に私が早くから懐疑的だったのは、もちろん「賢かった」(皮肉ですか?)せいなどではなく、社民主義の教師の影響を受けていたからです。
私は理系の学部に進学したせいもあって、大学生時代以後は政治経済の知識が深まらず、「第三の道」というのが社会民主主義と新自由主義の中間だということさえ理解せず、マルクス主義でも新自由主義でもない、社民主義的な路線だと勝手に思い込んでいたので、2001年に小泉内閣が成立した時に民主党が「カイカクを競う」路線をとった時に愕然とし、これを機に新自由主義について考えるようになった次第です。

kechackkechack 2008/02/08 02:07 日本では、社民主義が評価される前に新自由主義全盛期が来てしまい、きとんと議論されたことがないので、社民主義の是非以前に日本に合うようなカスタマイズができていない気がするんですよ。
 日本では与党が常に増税を狙い、野党が反対する構造が固定化されてために、小さな政府を主張する新自由主義政党が増税を訴え、社会保障の充実を訴える社民主義政党(実際に社民主義だと言っているのは社民党だけだが…)が増税に反対するというねじれ現象が続いているんですよね。
 社会福祉充実のビジョンを国民に示し、増税を納得してもらうという正攻法の社民主義を主張するのは山口二郎氏などごくわずかです。
 日本では公共事業を削って、その分で福祉を充実すべきというのが、80年代から今に至るまで常に都市リベラルを中心に支持されている考えであって、これは社民主義とも新自由主義とも違うのですが、入り口部分は新自由主義で出口が社民主義のような混血種なんですよ。基本的に私は常にこの思想の支持者であったし、昔の社会党も今の民主党も基本的にはこの考え、共産党すらこの考えに近いと思います。
 私はこの思想の入り口部分である「税金の無駄遣いためろ」という部分まで kojitakenさんは「新自由主義的だ」と批判しているような気するのですが?

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