きょうの社説 2010年5月29日

◎普天間方針決定 遅まきながらの「政治決断」
 米軍普天間飛行場の移設問題で、鳩山由紀夫首相が政府の対処方針に反対した社民党党 首の福島瑞穂消費者行政担当相を罷免したのは当然の判断である。外交・安全保障という国の根幹をなす問題で内閣の亀裂が決定的になった以上、福島氏を閣内にとどめる理由はない。

 普天間問題では、現行計画に戻る選択肢を残しながら、福島党首が年末に連立離脱に言 及し、首相が「新たな移転先」検討へかじを切った経緯がある。その後、1月の名護市長選で移設反対の市長が当選し、情勢が一気に厳しくなった。あの時に現行計画に回帰する決断をしていれば問題がここまでこじれることはなかっただろう。

 福島氏は首相が沖縄再訪問で名護市辺野古移設を明言した直後に沖縄を訪れ、知事に県 外移設の共闘を呼びかけるなど内閣の一員とは思えない行動に出た。この一件をみても、そもそも安全保障で基本的な見解が異なる党が手を組んでいることに無理がある。政府方針への反対を続けるなら、社民党は連立を離脱するのが筋である。

 日米両政府が発表した共同声明は、移設先を辺野古周辺とし、8月末までに代替施設の 位置と工法の検討を完了させる方針が盛り込まれた。鳩山首相とオバマ米大統領が電話会談し、遅まきながら新たな政権同士で一定の合意にこぎ着けた意義はそれなりにある。

 工法は埋め立てを軸に調整が進む見通しであり、実質的には現行計画をほぼ踏襲する形 となる。だが、沖縄では県内移設への反対や首相への不信感が高まり、解決の道のりは自公政権時代にも増して困難な状況になった。すべては鳩山首相が確たる目算もないまま「最低でも県外」との発言を繰り返してきた代償であり、進退を問われても仕方ない迷走ぶりだった。

 政府方針を閣議決定したからには、首相は沖縄の理解と協力を粘り強く訴えていくしか 道はない。共同声明に盛り込まれた訓練の県外移転や騒音軽減策についても、目にみえる形で着実に実行に移す必要がある。その一歩は「政治主導」の掛け声で空回りしたこれまでの手法を改め、問題解決に当たる布陣を強化することである。

◎修学旅行の誘致 伝統文化体験を切り札に
 石川県は今年度、県内市町の交流都市に照準を定め、修学旅行の誘致を進めることにな った。すでに金沢市と友好交流都市協定を結ぶ東京・板橋区から中学校の誘致に成功しており、それを弾みに実績を積み上げる狙いである。

 修学旅行については、全国の自治体が受け入れ体制を整備し、旅行プランの提案でも知 恵比べの様相を呈している。地域間競争の激しさを考えれば、自治体交流の下地を足掛かりに、直接セールスをかけるのは、誘致活動に欠かせぬ取り組みといえる。

 県内の修学旅行誘致のかぎを握るのは、金沢の知名度アップである。修学旅行で体験学 習を重視する流れが強まるなかで、金沢が誇る伝統工芸や和菓子づくり体験などは、他の地域にない誘致の切り札となる。国際会議の参加者を対象に工芸工房などを巡る「クラフトツーリズム」も金沢で始まったが、それらの修学旅行版となる魅力あるプログラムを策定し、「文化体験のメッカ」というイメージを全国に浸透させたい。

 日本修学旅行協会の調査によると、修学旅行の目的の上位は「寺社・史跡・文化財等の 見学」「博物館・美術館等の見学」「伝統的町並みや建造物群保存地区の見学」となっている。金沢はそれらの要素を兼ね備え、修学旅行を増やす潜在力は十分にある。

 他の地域との違いを際立たせるには、日本の城下町の姿を学べる場、日本の伝統文化を 幅広く体験できる場としての魅力を効果的に打ち出す必要がある。過去に修学旅行版のガイドブックも作成されているが、市販の観光本と代わり映えしない内容では訴える力にならない。地元教師らの知恵も借りながら、県外の学校が訪れたいと思わせるような体験プログラムを提案したい。

 京都、奈良、広島、北海道、沖縄、東京など修学旅行の行き先は固定化している面もあ るが、2014年度の北陸新幹線開業は、金沢や石川に目を向けさせる絶好のチャンスである。県と市町がスクラムを組み、この追い風を最大限に生かす戦略を練ってほしい。