郵政改革法案が、28日の衆院総務委員会で与党の賛成多数で可決された。2005年に小泉政権で決まった民営化路線を転換する内容で、今国会での成立を急ぐ与党が、1日間の委員会審議で採決を強行した。審議時間はわずか6時間。野党は「国会軽視」と反発を強めている。
法案は、日本郵政グループを5社から3社に再編し、政府が株式の一定割合を保有することを明記。郵便業務にのみ義務づけられている全国一律サービスを、金融事業にも広げることなどを柱にしている。全国郵便局長会(全特)を支持基盤とする国民新党は早期成立を主張。民主党の小沢一郎幹事長も今国会成立を明言した。
だが、審議では政府側のあいまいな答弁が目立った。
菅義偉委員(自民)「この法案の枠組みで日本郵政の黒字経営は維持できるのか」
亀井郵政改革相「新しい事業なのでどのくらい黒字か分からないが、自信を持って法案提出している」
菅氏が問題にしたのは、金融事業の全国一律サービスの義務づけや非正社員の正社員化などによる費用の増加で、将来の日本郵政の経営は安定するのかということだった。
政府側は、旧郵政公社時代のデータを元に大塚耕平内閣府副大臣が個人的に試算した数値を示し、過疎地の郵便局の金融業務による赤字額は年間464億円などと説明するにとどまった。
こうした費用をまかなうため、法案が成立すれば、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額などが引き上げられる。ところが、これによってゆうちょ銀やかんぽ生命の資金がどれぐらい増減するのかを問われても、大塚氏は「予断を持って言えない」と明確に答えることができなかった。
日本郵政が保有する金融2社の株式の将来的な売却についても方針が定まらない。亀井氏は「政府が売れとかいうのではなく、郵政自身が判断すること」と説明した直後に、「国民の財産であり、政府の判断を日本郵政が勘案するのは当然」と正反対の答弁をした。
与党は31日に衆院本会議を開き、法案を可決する意向だが、自民党は亀井氏の答弁を不満として郵政改革相の不信任決議案を衆院に提出する方針。混乱は続きそうだ。