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ギャンブル依存症:苦悩する人たち/中 82歳の父親「育て方悪かったのか」 /熊本

 「目の前が真っ白になったようだった」。熊本市の男性(82)が長男(49)から借金でどうにもならない状態になっていることを聞かされたのは約10年前。パチンコスロット(パチスロ)が原因だった。長男は約400万円の借金を抱え自己破産したが、それでもパチスロをやめられなかった。「育て方が悪かったのだろうか」。父は自らを責めた。

 長男とは別居しており、私生活の状況は知らなかった。借金の話を聞いて腹が立ったが何とかしなくてはいけない。肩代わりもしたが追いつかなかった。長男が姿を隠し、ヤミ金業者が家に来て行方を聞くこともあった。「知りません」と言うしかなかった。

 約7年前に本人自ら「自分はおかしい」と言いだした。ギャンブル依存症の専門外来がある菊陽病院に電話し、行くことが決まった。医師から「スリップ(再びギャンブルをすること)しても怒ってはいけない」「借金の肩代わりをしてはいけない」と言われた。しかし「何度もギャンブルを繰り返すのは意志が弱いからではないか」「息子だから何とか援助したい」と思った。

 ギャンブル依存症の家族が通って悩みを話せるような自助グループは当時なかった。妻(77)はわらにもすがる思いで薬物依存症患者の家族が集まる自助グループに通った。共感できる話ばかりではなかったが、少しでも参考になることがあればという思いだった。

 約3年前、熊本市内でギャンブル依存症家族のための自助グループが始まり、夫婦で参加するようになった。「パチスロに行ってしまった」と聞いて「また行ったのか」と責めたこともあった。なかなか本人の言葉を信じられない時期もあった。それが、周りの人の話を聞きながら「がみがみ言っても同じ」と思えるようになった。ギャンブルに行ったとしても怒らず「何が引き金になったのだろう」と一緒に話し合いができるようになった。

 長男は約3年前からパチスロから遠ざかっているという。それでも毎週、夫婦で自助グループに行き続けている。「ここに来ることで他の家族にも同じような悩みがあると分かり、安心できる」。男性は言葉をかみしめるように話した。【遠山和宏】

毎日新聞 2010年5月28日 地方版

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