2008年02月17日

TacticsOgre(タクティクスオウガ)1巻 松葉博

 初っ端から衝撃の選択をする作品、なのだがLルートこそ王道であるのも事実、きっとCルートではあれこれの説明に余計な手間を掛けなくてはならずキャラクター描写どころではない。まぁ、多少ハチャメチャになったほうがカオスルートらしいけど……。
 あとがきで著者はデニムへの視点を開陳しているのだが、個人的にはデニム・パウエルという主人公は非常に難しいキャラクターでヴァイスやカチュアに比べれば一種のモンスターといって良いと感じている。
 そうでなければあのバルバトス枢機卿とカリスマ面で干戈を交えることなど到底敵わなかったであろう。ある意味とことん人間臭いブランタ伯父さんとは正反対の性格だ――兄に裏切られたプランシー神父が正反対に育てたとみるべきか。
 ともかく父の「おのれを棄てよ」の言葉が呪詛のようにデニムを絡めとっているのは事実だ。それによって主人公が無我の状態となり、プレイヤーにとって自己投影が可能となったと松葉先生は解釈されているのかもしれない。
 やはり選択肢を自在に操られるゲームの人物に芯をもたせて描くのはいろいろ難しいものと思われる。

 おもしろいのは周辺のキャラクターへのフォローで、ヴァイスは「デニムが右向きゃ俺左」ではなく先に自分の意見を述べているし――だから一足早く絶望出来てしまったのだけど――カチュアはそうとう刺々しさを緩和されて過酷な現実に翻弄される心優しい少女になっている。
 誰じゃ!?ヴァイスがきれいなヴァイスに、姉さんがストール以外全裸にみえたのは夜も明けきらぬ薄暗さのゆえ、デニムは自分にそう言い聞かせた。

 レオナールの部下三人衆もそれなりに立場があり、とくにサラの姿は遠景で映えている。最強剣ヴォルテールも角刈りなどではなく「哲学するナイト」を名乗れば岬越寺秋雨なみにみえたかもしれない。何にしても初期メンバーが戦力的にはともかく、デニムの人格形成に多大な影響を及ぼせたという発見を与えてくれたことは新鮮だった。
 結局レオナールやランスロット・ハミルトンの影響が大きいわけだけど……。


 オルゴールの名シーンはゲームでは描写しにくかった夕陽に照らされた海が描かれており、とても感慨深かった。バルマムッサの丘にならんで立つ姿もイメージイラストを連想させて印象強い。なかなか漫画なりの趣向に富んだ作品である。

タクティクスオウガ2−4巻感想

タクティクスオウガ (1)
Edit こいん │Comments(0)TrackBack(0)漫画 

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