年に一度だけ一般参拝者の上陸が許される宗像市の沖ノ島で予定されていた宗像大社沖津宮現地大祭が27日、高波で中止となり、参拝者たちは同市・大島の沖津宮遥拝(ようはい)所から、沖ノ島に向かい手を合わせた。中止は10年ぶりで、全国から集まった約200人の参拝者からは「楽しみにしていたのに」と残念がる声が聞かれた。
大祭は、1905年5月27日、島近海であった日本とロシアによる日本海海戦の戦死者慰霊として、同大社が毎年行っている神事。島は宗像大社の神域で、基本的に神職しか上陸できないが、この日だけは一般の人も立ち入ることができる。
前日から大島に渡り宿泊した参拝者たちは、午前7時、大島港で神職から中止を知らされた。このため、急きょ洋上参拝が行われ、大島を一周する市営渡船から、かすかに見える沖ノ島に手を合わせた。その後、大島北岸の沖津宮遥拝所に移動。女人禁制のため沖ノ島に渡れない女性たちのために設けられた社に向かって、祈りをささげた。
27回目の参加となる熊本県長洲町の男性(57)は「中止を経験するのは3回目。昨日からあきらめていた」とがっかり。初参加の筑紫野市の早田元成さん(69)は「来年またきて島をこの目で見たい」と話していた。
沖ノ島は4-10世紀に、海上交通の安全を祈る国家的祭祀(さいし)が行われ、出土品約8万点が国宝に指定される「海の正倉院」として知られる。昨年、「宗像・沖ノ島と関連遺産群」が世界遺産の国内暫定リストに記載された。
=2010/05/28付 西日本新聞朝刊=