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発信箱:油断、慢心は禁物だ=小松健一(北米総局)

 毎日新聞を含め日本メディアはよく「米国の地球温暖化対策法案」と報じるが、下院で昨年可決されたのは「米国クリーンエネルギー・安全保障法案」。上院の委員会レベルでは「クリーンエネルギー・雇用・米国電力法案」が可決されている。

 法案名から推察できるように、実は温室効果ガス削減目標がどうのこうのは二の次で、環境ビジネス競争の勝利への方程式に彩られている。

 一例を挙げよう。世界貿易機関(WTO)で温暖化対策物品の貿易自由化交渉が行われている。太陽電池、風力発電機など再生可能エネルギー関連の関税を撤廃・削減して世界に普及させようというものだが、ハイブリッド車や発光ダイオード(LED)照明器具など日本が要望する省エネ物品は排除されている。「5年間で輸出倍増」を掲げるオバマ政権にとって、いやどの国も「省エネ大国」日本に突出した国際競争力を与えたくない、というのが本音だ。

 ゼネラル・モーターズ(GM)社の最大株主のオバマ政権は、日本に水をあけられたハイブリッド車市場での競争よりも次世代電気自動車開発を優先する。電気自動車の普及を念頭に再生可能エネルギーのビジネスモデルづくりに官民一体となって取り組み、中国や韓国、欧州の主要企業を引き込んでいる。ハイブリッド車の自由貿易交渉は論外なのである。法案はまだ上院本会議で審議中ではあるが、地球温暖化に対処する米国の基本的考えを象徴している。

 鳩山政権が「地球温暖化対策基本法案」で誇る「90年比25%減」の温室効果ガス削減中期目標は、米国の暫定目標「05年比17%減」を見劣りさせ、国連からも評価されている。だが、米国の動向を注視しないとお家芸の省エネ技術は本当に世界で孤立してしまいかねない。

毎日新聞 2010年5月3日 0時12分

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