現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. ビジネス・経済
  4. コラム
  5. 経済気象台
  6. 記事

対照的な政治圧力

2010年5月28日0時6分

 日米で対照的な金融政策への政治圧力が見られる。

 米国は連邦準備制度理事会(FRB)の景気認識が極めて慎重で、本音では「出口戦略」を進められる状況ではないとの認識だ。 ところが、4月末には、準備預金を凍結する意図で、FRBが銀行に定期預金を発行できるよう、規定を修正。直前の連邦公開市場委員会では、信用支援や量的緩和の象徴となるFRB資産の圧縮が議論された。何か強い力で「出口」に追いやられている感が否めない。

 FRB幹部によれば「景気下ぶれリスク山積」と言う。政策効果や在庫による景気押し上げは今がピークで、今後政策効果は減衰する。加えて、効果の出ない住宅差し押さえ抑制策、住宅価格や商業用不動産価格の再下落リスク、増えない雇用などから、来年に向けて景気は減速が見えているという。欧州の財政危機も不安材料だ。

 それでも世論は、国民の利益を顧みずに金融支援をやりすぎたFRBを強く批判しており、議会も当局の過剰介入にノーと言う。結局FRBはこわごわと「正常化」を進めざるを得なくなっている。

 翻って日本では日銀に対して超党派で「包囲網」がかかり、政治面から日銀法改正や物価目標の明示、財政法の改正による国債の直接引き受けなどの圧力がかかる。さすがに、輸出や家計消費、生産の強さを見て、日銀は追加策を見合わせたが、組織防衛の観点から、成長基盤強化への新たな貸出制度の概要を決めた。

 日本の預金者は、米国以上に長期間、利息を放棄して政府や企業に奉仕している。国民も国会も怒りを表明しないことをいいことに、政府は更なる所得移転を画策する。おとなしい人ほど怒った時は怖い。(千)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

PR情報
検索フォーム

おすすめリンク

不況に負けない成長産業がさらなる巨大化を始めた。介護業界が抱える爆弾とは?

規制強化によって金融機関、そして金融の姿はどのように変化するのか。

安さの限界に挑む牛丼店。そこから経済・経営の真理を学ぶ


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介

ビジネストピックス

クラウド・コンピューティング特集

新たなIT時代を読み解くキーワード「クラウド」を理解するには?