同じような話が液晶材料を動かす薄膜トランジスタ(TFT)用半導体材料にもある。今年1月、東京工業大学のすずかけ台キャンパス(横浜市)で「透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)ワークショップ」が開かれた。発表内容の中心は東工大の細野秀雄教授が1995年に国際会議で紹介した世界初のTAOSである酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(IGZO)だった。
IGZOは現在の液晶用TFTに使うアモルファスシリコンに比べて電子の動きの指標である電子移動度が1ケタ大きい。液晶テレビをさらに大画面にしたり臨場感を高めたり、本格的な3Dテレビを実現できる。
細野教授は04年に英科学誌ネイチャーにIGZOの研究内容を載せた。この時、「最初に問い合わせてきたのは日本企業でなくサムスン電子とLG電子だった」(細野教授)。サムスン電子は07年のSIDではIGZO―TFTを使った大型ディスプレーを紹介した。日本企業も開発を進めているが、現在の勢いはサムスンが他社をリードしているようだ。
九大のPSBPも東工大のIGZOも、次世代の薄型大画面テレビに使うことで共通する。振り返ると2000年ころまでは液晶テレビなどディスプレー関連の研究と製品化で日本が世界で先頭を走っていた。
その後、急速な勢いで韓国と台湾企業がシェアを拡大した。低価格化競争に巻き込まれた日本企業は次々とディスプレー事業を縮小したり撤退するようになった。かつて日本でディスプレー開発を手がけた日立製作所やソニーの技術者が今では何人も韓国や台湾企業で活躍する。
これら2つの事例以外でも、電気抵抗がゼロになる超電導材料や発光ダイオード(LED)の基板に使う窒化ガリウム単結晶など、最先端材料の研究は日本が現在も世界の先頭を走っている。日本は材料で生きればいいという意見もある。しかし華やかな最終製品の生産が海外流出するにつれ、日本全体の活気が失われつつあるように感じる。日本で発明された新素材は日本企業がいち早く産業に結びつける。そんな意欲が日本企業に欲しい。そうしなければ、新素材自体が日本で誕生しなくなる。
(科学技術部 黒川卓)
電子材料、九州大学、サムスン電子、日油、カラーフィルター、薄膜トランジスタ、LG電子、日立製作所、ソニー
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