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ギャンブル依存症 ある主婦の裁判から上

2010年05月26日

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被告がパチンコをしていた店の入り口に張られているポスター。子どもの車内放置に注意を呼びかけている=由利本荘市

「心の底からワクワクする。パチンコ台に座るだけで、酔っている感じがした」

 18日から4日間にわたって秋田地裁であった裁判員裁判。生後11カ月の長男を車内に約3時間放置して死亡させた保護責任者遺棄致死の罪に問われた無職堀淳子被告(32)=にかほ市象潟町=は、パチンコにのめり込んでいった心境を、そう振り返った。

 公判では、ギャンブル依存症という言葉が何度も出てきた。弁護側は「病的賭博」という表現で主張。被告は主婦業よりもパチンコを優先し、やめようと思っても自分の意思ではどうにもならない状態で、適切な治療が必要だとして執行猶予を求めた。判決は被告をギャンブル依存症と認めたものの、「刑を猶予すべき事情ではない」として、2年6カ月の実刑を言い渡した。
 判決後、記者会見に応じた裁判員はギャンブル依存症について「初めて知った」「報道で聞いてはいたが、右から左に抜けるだけだった」などと感想を口にした。
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 「アルコールや薬物依存に比べ認識されていないが、ギャンブル依存症は病気だ」。北海道立精神保健福祉センターの田辺等所長は訴える。

 ギャンブル依存症は、パチンコやパチスロなどをいったん始めるとやめられず、やりたい気持ちを抑えられない症状が特徴だ。アルコールや薬物への依存とも共通する精神状態とみられている。

 同センターへの年間の相談のうち全体の2割、約40〜50件がギャンブル依存に関するものだ。バブル崩壊以降、男性の相談が増え始め、最近は女性が目立つ。その背景に、ギャンブルがレジャー化し、倫理的な抵抗感が薄まったこと、カードで気軽に借金できるようになったことがあるとみている。

 田辺所長は、ギャンブル依存症は全国的に増えているという。国内の患者数は推測値で人口の2%前後の150万人から200万人。「個人の意志の弱さのせいにせず、治療すべき病気だという認識が広まることが問題解決の第一歩」と語る。

 薬物やアルコール依存症患者らが更生を目指して共同で暮らす民間更生施設「秋田ダルク」(大仙市協和)にも、ギャンブルに関する相談は増えている。一度でも大当たりを経験すると「次も勝てるのでは」とのめり込んでいく。負けていても、大当たりを出すまで帰れず、自分を制御できなくなる。

 自身、薬物依存と闘った平原薫代表は「人間は何かに依存していないと生きていけない。家族や仕事など、新しい依存の対象が見つかれば、立ち直るきっかけになる。被告の場合、子どもが新しい依存の対象にならなかったのが残念だ」。
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 「自己評価の低さが、被告を依存的な性格にした」。堀被告を診察した精神科医は法廷でそう証言した。二十歳前後の頃はアイドルの追っかけにはまり、給料を上回る金額をつぎ込んだこともあった。パチンコで借金を作ってもやめられず、周囲にうそをついてまで通い続けた。

 今後、パチンコを絶対やらない自信はあるか――。公判中、検察官から問われ、かすれるような声でこう話した。 「そう簡単に頭の中から消えない」

 息子を亡くした今もなお、パチンコをやめられるか自信がないという。一方、ギャンブル依存症の人が集まる自助グループに参加し、「自分の弱い部分をさらけ出し、見つめ直したい」と語った。

 被告が救いを求めた自助グループとはどんなところか。記者は会合に足を運んだ。
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 裁判員裁判で量刑判断の一つになった「ギャンブル依存症」。その実情に迫った。(笠井哲也、田中祐也、矢島大輔)

病的賭博(ギャンブル依存症) 1980年に米国で精神疾患として認定。その後、世界保健機関の疾病分類にも組み入れられた。欧米の数値を参考にすれば、国内の患者数は150万人以上と推測される。治療法は、医師の診察や国内約100カ所の自助グループへの参加などがあるが、米国に比べると取り組みは遅れている。

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