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東京・板橋の殺人放火:妻のかばん、未発見 直前所持、強盗容疑が浮上

 東京都板橋区で09年5月、地元で資産家として知られた不動産賃貸業、瀬田英一さん(当時74歳)と妻千枝子さん(同69歳)が殺害され、自宅を放火された事件で、千枝子さんが普段持ち歩き、事件当日も所持していたかばんが見つかっていないことが分かった。警視庁板橋署捜査本部は犯人が夫妻を殺害後、かばんを奪い去った強盗殺人の疑いもあるとみて捜査している。捜査本部は23日、事件発生から1年を前に、近くの商店街などで情報提供を求めるチラシ3000枚を配布した。【神澤龍二、山本太一】

 事件は09年5月25日午前0時半ごろに発覚。板橋区弥生町の瀬田さん方から出火し、焼け跡から鈍器で頭を殴られたうえ、刃物で胸などを刺された夫妻の遺体が見つかった。

 捜査関係者によると、千枝子さんは事件前日の同24日午後10時半過ぎまで、自宅から約1キロ離れた東武東上線大山駅近くのパチンコ店にいたことが防犯ビデオで確認されている。ビデオに普段持ち歩いている紺色のかばんを持っている姿が映っていた。千枝子さんは午後11時以降に帰宅したとみられている。

 千枝子さんは自宅玄関近くで靴を片方履いたままの状態で倒れていた。しかし、遺体の周辺にかばんはなく、パチンコ店からの帰宅に使った乗用車内からも見つからなかった。

 千枝子さんはかばんに常時現金約10万円を入れていたといい、捜査本部は犯人がかばんを持ち去った強盗殺人の疑いがあるとみて、交友関係を中心に捜査している。自宅には現金数千万円が保管されていたが、奪われずそのまま残されていた。

 25日に事件発生から1年を迎えるのを前に、捜査本部は23日、大山駅前の商店街などでチラシを配った。捜査本部はこれまでに、延べ1万4000人の捜査員を投入し、約8000人から事情を聴いた。約70件の情報提供があったが、有力な情報は得られていない。情報提供は03・5272・0110(捜査本部)まで。

 ◇「本人一番悔しい」 犯人逮捕祈る遺族

 「まだまだ孫の成長を見守ることができたのに」。夫妻の親族の男性は唇をかんだ。男性は「事件直後と状況が何も変わっていないせいか、あっという間だった」と振り返る。

 事件の動機も不明のままだ。男性は「恨みが原因なら、僕らも狙われる可能性がある」と不安を漏らす。事件後、知らない人が訪れるとドアを開けるのが怖くなった。「犯人が捕まらないことが大きなストレス」と言う。今でも事件のことを考えると仕事が手につかなくなる。そんな時は「遺族だけでなく、友達も苦しんでいる。何より亡くなった本人たちが一番悔しいはず」と自らに言い聞かせる。

 夫妻は30代で再婚し、互いの連れ子3人を育てた。千枝子さんは東海地方に暮らす息子(46)と孫2人に会うのを何よりの楽しみにしていた。乗用車を1人で運転し、数百キロ離れた息子の自宅を度々訪れていたという。

 「捕まったからといって、それで気が済むわけではない。だが一つの区切りにはなる」。男性は毎日、仏壇に手をあわせて夫妻の冥福と事件解決を祈っている。【内橋寿明】

毎日新聞 2010年5月24日 東京朝刊

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