反捕鯨団体の「シー・シェパード」が日本の調査捕鯨を妨害した事件で、傷害などの罪に問われているニュージーランド人の元船長の初公判が開かれ、元船長は「人を傷つける意図はなかった」と主張し、傷害の罪について争う姿勢を示しました。
シー・シェパードの抗議船「アディ・ギル」号の元船長でニュージーランド人のピーター・ベスーン被告(45)は、ことし2月、南極海で日本の調査捕鯨団の「第2昭南丸」に無断で乗り込んだほか、強い酸性の薬品が入った瓶を撃ち込み、乗組員1人に軽いけがをさせたなどとして艦船侵入や傷害など5つの罪に問われています。東京地方裁判所で開かれた初公判で、ベスーン元船長は通訳を介して、艦船侵入など4つの罪を大筋で認めましたが、「人を傷つける意図はなかった」と主張し、傷害の罪については否認しました。また、妨害行為を行った動機については「背景にはいろいろ事情がある」と述べ、今後の審理で調査捕鯨に対するみずからの意見を主張することを示唆しました。続いて行われた冒頭陳述で、検察は「ベスーン被告は、ドキュメンタリー番組のカメラマンに撮影させる目的で第2昭南丸に侵入することを計画し、カメラマンといっしょに水上オートバイに乗って船に接近した」などと指摘しました。これに対して、弁護士は、「被告はほかのメンバーから薬品は人体に害のないものだと聞いていた」などと主張しました。また、27日の法廷では、第2昭南丸の乗組員が薬品入りの瓶が撃ち込まれる様子を撮影した映像が流されました。一方、27日は、裁判所の周辺で、シー・シェパードの活動に抗議する市民グループが「日本へのテロ行為を許すな」などとシュプレヒコールを繰り返すなど騒然とした雰囲気の中で裁判が始まり、裁判の冒頭で、裁判長が被告や傍聴席に向かって「不穏な行動などがあれば、身柄を拘束する場合もある」と異例の注意を行う場面もありました。この事件をめぐっては、一連の妨害行為を指示していた疑いが強まったとして、海上保安庁は、先月、シー・シェパードの代表のポール・ワトソン容疑者の逮捕状を取り、今後、国際手配することにしています。