牛肉輸出 口蹄疫がブレーキ 拡大基調…取引停止で暗雲

2010.5.27 05:00

 宮崎県で発生した口蹄(こうてい)疫の影響で国産牛肉(枝肉)の海外輸出が、ほぼ全面的にストップしている。最大輸出先のベトナムはじめ、米国向けなど輸出全体の約8割の取引が停止となり、再開の見通しが立っていない。昨年は輸出量が倍増するなど、政府の輸出支援を受けた販路開拓がようやく実を結び始めた矢先の取引停止に、関係者から「海外市場を失う」(商社の畜産担当)との悲鳴があがっている。

 輸出停止は、日本が家畜衛生に関する国際機関である国際獣疫事務局(OIE)認定の「清浄国」から「非清浄国」に転落したため。4月20日の全面停止後、個別協議で香港とマカオについては取引が再開されたが、「清浄国」への復帰を取引条件とする主要輸出先のベトナム、米国、シンガポール、マレーシア、カナダ、アラブ首長国連邦との取引は停止したままだ。

 牛肉の輸出総量は、高品質の国産農畜産物の輸出促進を掲げる政府方針を追い風に、2006年から年々増加し、09年には06年(74トン)の約8倍に相当する565トンに拡大。このうち、取引が停止している主要6カ国の合計は、輸出総額(37億7300万円)の8割を占める。

 今年1~3月の輸出も前年同期比3倍超と好調に推移していただけに、「(海外事業を)柱に育てようとしていた業者は大きなショックを受けている」(日本食肉輸出入協会の岩間達夫専務理事)。

 清浄国への復帰には、ワクチンを接種した家畜すべての殺処分終了後3カ月間病気の発生がないことが最低条件。ただ、殺処分時期は未定で、輸出停止が長期化する公算が大きい。(臼井慎太郎)

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