顔の傷訴訟の判決要旨労災障害補償給付の性差別をめぐる訴訟で、京都地裁が27日言い渡した判決の要旨は次の通り。 【障害等級表の合憲性】 障害等級表において、人に嫌悪の感を抱かせるほどではない外貌(外見)の醜状(けがなど)障害について、男女に差を設け、差別的取り扱いをしていることが憲法判断の対象となる。 ▽労働力調査 国は「労働力調査における産業別の女性比率や雇用者数によると、女性の就労実態として、接客など応接を要する職種への従事割合が男性に比べて高いと言える」と主張する。しかしこの「産業」は、就業者が実際にした「職業」とは異なる。 サービス業全体で女性の雇用者数の増加が男性より大きいことも根拠となると主張するが、サービス業の中には廃棄物処理業などが含まれ、根拠となるとは言えない。 ▽国勢調査 国は「国勢調査の職業小分類別雇用者数データを分析すると、女性の接客を要する職種への従事割合が男性より高いと言える」と主張する。 本件取り扱いの合理性を根拠付ける男女間の差は、外見の醜状障害で生じる本人の精神的苦痛などで就労機会が制約され、損失補てんが必要だと言えるような差である必要がある。多くの不特定の他人と接する機会が多い職業も含めて考えるのが相当で、少なくとも音楽家や美容師などを合計して分析すると、国勢調査の結果は実質的な差の根拠になり得るとは言えるものの、顕著なものとも言い難い。 ▽精神的苦痛 国は「化粧品の売り上げなどから、女性が男性に比べて外見に高い関心を持つ傾向があることがうかがわれ、外見の醜状障害による精神的苦痛の程度について明らかな差がある」と主張する。 ただ男性でも苦痛を感じることもあり得ると考えられ、実際に原告が大きな苦痛を感じていることも明らかだ。外見への関心の程度や性別が精神的苦痛の程度と強い相関関係にあるとまでは言えない。 ▽判例 国は「外見の醜状障害に関する逸失利益などが問題となった交通事故の判例により、男女間に実質的な差があるという社会通念の存在が根拠づけられている」と主張する。確かに男女差を前提とするような記述が見受けられるが、記述自体の合理的根拠は必ずしも明らかではない。 ▽まとめ 本件差別的取り扱いの策定理由には根拠がないとは言えないが、男女の性別で(障害等級表では)5級の差がある。等級表では年齢や職種、経験など職業能力的条件について、障害の程度を決める要素となっていないが、性別がこれらの条件と質的に大きく異なるとは言い難く、外見の醜状障害についてだけ、性別によって大きな差が設けられている不合理さは著しいというほかない。 【結論】 本件は合理的な理由のない性別による差別的取り扱いで、障害等級表は憲法に違反すると判断せざるを得ない。処分は障害等級表の憲法に違反する部分に基づいてされたもので違法。取り消されるべきだ。 【共同通信】
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