きょうの社説 2010年5月28日

◎朝鮮半島緊迫化 中国、ロシアの説得がカギ
 韓国の哨戒艦沈没事件をめぐって、北朝鮮寄りと見られていたロシアと中国の姿勢が微 妙に変わり始めた。韓国政府の調査結果に懐疑的な態度を示していたロシアが「沈没の真の原因を早急に解明することが重要」として、独自の専門家グループを韓国に派遣すると発表した。

 ロシアの調査団が北朝鮮の攻撃を確認すれば、国連安全保障理事会での制裁に賛同する との含みを持たせたものだろう。

 また、中国も28日開催の中韓首脳会談や29日の日中韓首脳会談で、北朝鮮を非難す ることに同調する姿勢という。安保理を通じた追加制裁には反対の立場を取るとみられるが、現場海域から回収された魚雷の破片に北朝鮮魚雷と同じハングル表記が確認されるなど、「北の犯行」を裏付ける証拠がそろったことで、中国とロシアを北朝鮮から引き離す余地が出てきたのではないか。

 朝鮮半島の緊迫化は、北陸にとって、決して「対岸の火事」ではない。まさかの軍事衝 突を避けるためにも日米韓が一致協力して北朝鮮の後ろ盾になっている中国、ロシアの説得に全力を挙げたい。

 韓国政府が哨戒艦沈没の原因を「北朝鮮製魚雷による水中爆発」と断定した直後から、 北朝鮮情勢は一気に緊迫化した。北朝鮮は韓国の主張を「でっち上げ」と完全否定し、対話と交流をほぼ全面的に中断、断絶すると宣言した。

 韓国メディアによると、北朝鮮は特殊部隊約5万人を南北非武装地帯に近い最前線に配 置したほか、潜水艦4隻が日本海側の海軍基地から出航した後、行方不明になっているという。軍事衝突にまで発展する可能性は低いとはいえ、小競り合い程度ならいつ起きてもおかしくない。

 日米韓にとって、最も有効な対応策は、国連安全保障理事会に北朝鮮への制裁強化を求 めることだ。新たな対北制裁決議の採択には、常任理事国の中国とロシアの同意が必要である。ロシアが韓国の調査結果を「信用できる」と判断すれば、制裁強化に賛成するだろう。もし中国が日米韓の説得に応じるなら、朝鮮半島情勢は劇的に変わるはずだ。

◎増える新規就農者 定着の支援策にも工夫を
 北陸農政局管内で昨年、新たに農業に就いた人が前年より50%増の407人に上った 。石川県は58人で前年の3・6倍、富山県は89%増の51人と大幅な伸びである。近年の不況と相まって農業への関心が高まり、就職の受け皿として期待されるようになったことが主因とされる。後継者難に悩まされる北陸の農業にとって大いに歓迎すべきことであるが、新規就農者が実際に根を下ろすには課題も多く、政府、自治体は定着の支援策にも一段と工夫を凝らしてもらいたい。

 北陸農政局のまとめでは、407人の新規就農者のうち、農業以外からの新規参入が前 年の5・5倍の197人を占める。また、農業法人への就業者も、前年の3・8倍の245人に急増した。

 石川県は昨年、農業人材機構を新設し、就農希望者のための研修制度を拡充するなど、 各自治体は農業の担い手育成に力を入れている。加えて、政府が雇用対策としても離職者らの就農を積極的に後押ししたため、大幅な増加につながったとみられる。

 もっとも、新規就農者の前途は決して平たんではなく、農林水産省の調査では、しっか りした就農計画を作成して知事の認定を受けた就農者(認定就農者)でも、就農5年以内に約8%が離農しており、とりわけ非農家出身者の離農率は約12%と高い。

 認定就農者は一般の就農者よりも手厚い行政の支援を受けることができる。それでも「 十分な収入を得られない」「農業経営の技術が不足している」などの理由で離農する人が絶えないのであるから、新規就農者全体の早期離農率はさらに高いとみられる。離農者のうち就農1年目の人が3割を超えるというデータもある。

 新規就農に際しては、研修制度や初期投資の資金援助の仕組みが国、自治体で用意され ているが、その後のフォローアップも重要であり、市町村の中には生活支援の助成金を毎月支給したり、農地賃借料を補助するなど独自の支援策をとっているところもある。就農後のバックアップ策の拡充を各自治体で考えてもらいたい。