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【主張】口蹄疫拡大 後手の対応から抜け出よ
宮崎県で口蹄(こうてい)疫の被害が発生してきょうで1カ月になる。感染が疑われる家畜数や農場の数は、なお増え続けていて衰える気配がない。
東国原英夫知事は「全国に拡大する可能性も否定できない」と非常事態を宣言したが、疫病封じ込めには何より感染に先んじて迅速に手を打つことが重要な意味をもつ。
野党からは、農水省はじめ政府の初動態勢の遅れを国会で追及すべしとの声がある。とりわけ赤松広隆農林水産相の「対応の遅れなどはない」という無責任な発言には憤りすら感じるが、今はともかく感染の拡大を止めることに国を挙げて取り組むときだ。
政府の対策本部(本部長・鳩山由紀夫首相)は19日、新たな対策として、発生が確認されている農場から半径10キロ以内のすべての牛や豚にワクチンを接種することを決めた。消毒などを中心にした対策では感染の拡大を食い止めるのは困難と判断したためで、10〜20キロ圏には緩衝地帯を設けることにより、感染の拡大を防ぐ。
家畜へのワクチン接種については感染力を弱める効果があり、防疫態勢を固めるための時間稼ぎには役立つ。しかしウイルスの根絶能力はなく、接種後は殺処分せざるをえないことに変わりはない。また、一度使うと発生が収まった後もしばらく出荷ができなくなるため、是非について専門家の間で見解が分かれている。
だが、堂々巡りの議論を続けることで、いたずらに被害を拡大させるよりはましだ。一定の効果が期待できるなら、最後は政府が責任を負う気構えで対処すればよい。政府も首相が対策本部長に就いた以上、各省の縦割りを排した協力態勢を作り上げねばならない。なかでも深刻なのは、現地で防疫にあたる人員の不足だ。
感染の確認や殺処分の判断を下す獣医師や、処分後の家畜を埋却する人員が圧倒的に不足している。近県からの応援に加え、自衛隊員の増派など、早急に万全の態勢をとってほしい。
現地にはすでに、延べ約2400人の自衛隊員が重機材とともに派遣されている。しかし、拡大のスピードが速く、牛豚を埋却する場所はあっても処理が追いついていないのが実情だ。
この口蹄疫問題では、政府の対応は常に後手後手に回ってきた。鳩山首相の指導力が、ここでも問われている。