4月21日、金融庁17階の副大臣室で、大塚耕平副内閣相がカトラー米通商代表部(USTR)代表補と向かい合った。前日に亀井静香金融・郵政担当相と原口一博総務相が発表した郵政改革法案の骨子を説明するためだ。
今回の改革で、日本郵政グループのゆうちょ銀行とかんぽ生命保険による住宅ローンやがん保険などの新規業務参入が、認可制から届け出制に緩和される。USTRは「見直しが、日本の金融市場での競争に深刻な影響を及ぼしかねない」として、世界貿易機関(WTO)に提訴する可能性も示唆。約1時間に及んだ会談で大塚氏は「第三者委員会が新規業務の民間との公平性を検証する」と語ったが、USTR側の強硬姿勢は変わらなかった。
郵政改革法案への批判は国内でも根強い。
3月24日、亀井氏が郵貯の預け入れ限度額引き上げを発表すると、仙谷由人国家戦略担当相らが「もう決まったように報道されているが、閣内で議論になっていない」と反発。民主党内からも「根回しが足りない」との声が上がったが、大塚氏は「公表までに(与党議員の参加できる)政策会議を9回開いた。手続きはきちっと経ていて、瑕疵(かし)はない」と亀井氏を弁護した。
「亀井側近」として政府内での存在感を高める一方、日銀出身の「金融通」としての活躍を期待していた民間金融機関からは「郵貯肥大化に異議を唱えるどころか逆に手を貸した。『官から民へ』から再び『官へ』。方針がころころ変わることが日本経済の一番のリスクだと認識しているのだろうか」(大手行幹部)との不満も漏れる。【中井正裕】
毎日新聞 2010年4月28日 東京朝刊