一日でも早く消火して 川南町農家からの手紙

(2010年5月22日付)


 口蹄疫感染が拡大している川南町の養豚業森本ひさ子さん(60)から21日、速達で手紙が届いた。懸命に防疫作業を続けたが、16日に感染疑いを確認、1200頭の殺処分が決まった。発生農家にしか分からない現場の悲惨な状況と無念さがつづられ、豚舎の写真を添え、一日も早い終息を訴える。全文を紹介する。

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 我が家は養豚歴38年で、現在約1200頭の豚の殺処分をまっています。

 口蹄疫の発生直後より、埃(ほこり)ひとつにもウイルスが付いているのではないかと、畜舎はもとより、身に付けた全ての物まで徹底して消毒を行ってきました。

 我が家には戦争で全てを失い朝鮮から引き揚げ、川南の大地を開墾して共に養豚業を築いてくれた88歳の姑(しゅうと)がいる。「今日は大丈夫だったけど明日はどうじゃろか」と怯(おび)える日々を姑が「召集令状を待つ思い」と呟(つぶや)いていた。

 5月16日に我が家もついに陥落、白旗を揚げるとプツンと緊張の糸が切れた。疲れ切った私たちを思いやり、その無念さを姑が短歌でいたわってくれた。

養豚の音なき終わりにすべもなく 只(ただ)ありがとうの感謝あるのみ

近日に命絶たれる母豚あり 日々出産をするもあわれぞ

 我が家の豚に感染が確認されてから今朝までに119頭の子豚が死にました。我が家の畜舎ではウイルスが爆発炎上しています。お願いです。一日でも早く消火してください。

【写真】<上>「免疫力のない子豚はあっという間に肺をやられるのでしょう。血性の泡(あわ)を吹いて死んでいきます」<下>「生まれたばかりの13頭の子豚。たっぷりオッパイを飲みスヤスヤ眠る。明日から明後日(あさって)には死に絶える」(撮影・文は森本さん)