子豚毎日40頭犠牲 森本さん切実に訴え

(2010年5月22日付)


 「口蹄疫ウイルスに抵抗力のない生まれたばかりの子豚が、毎日40頭ずつほど血のあわを吐きながら死んでいきます」。養豚業森本ひさ子さん(60)=川南町川南=は、豚1200頭の殺処分が決まった今も、毎日豚舎に通い世話を続ける。

 口蹄疫に感染し、熱が出たり、足の水疱(すいほう)が破れて立てない親豚たち。豚舎で日に日に感染が広がっていくのが分かる。感染した豚はとにかくのどが渇くらしく、「少しでも楽にしてやり、喜ぶ顔が見たい」と、水ではなくスポーツ飲料を与える。口蹄疫ウイルスは「見えない敵」だが、森本さんら畜産農家には現実のものとして、いままさに目の前に見える。

 敷地内に埋却地を確保した。だが、獣医師ら人材の数が現場の数に追い付かず、補償のための評価がまだ受けられない。殺処分や埋却の予定は立っていないという。

 死んだ子豚は21日までに140頭を数える。腐らないように冷蔵庫で保管しているのは、せめて殺処分された母豚と一緒に埋めてやるためだ。

 38年間、豚とともに生きてきた。「豚は気の小さい動物で、ブラッシングなどで温かく接することにより人を信用するようになる」。森本さんは、今後殺処分を行う獣医師に「できるだけ怖がらせないように殺してください」と頼んだ。

 このままでは児湯地区だけでなく宮崎、日本の畜産が崩壊すると危機感を強くし、今回、手紙や写真を宮崎日日新聞社に速達で送った。「口蹄疫は生やさしいものではない。口蹄疫の勢いを実感している者として、そのことを伝えたい。一刻も早い対策と終息を願う」