「川南町農家からの手紙」 読者の声(上)

(2010年5月25日付)

 本紙22日付1面で川南町の養豚農家森本ひさ子さん(60)から寄せられた手紙と写真を掲載しました。飼っている1200頭の殺処分が決まり、緊張の糸が切れたという森本さんは、発生農家にしか分からない日々の現実を伝え、一日も早い終息を訴えています。また、ウイルスに感染して死んでいった子豚の写真も添えられていました。これに対し多くの読者からメールや電話などで反響が寄せられました。「衝撃を受けた」「支援したい」という意見から、写真掲載に否定的なものまで内容もさまざまです。その一部を2回に分けて紹介します。

■獣医師目指す娘は…

 新聞を見て息をのみました。一気に読み、涙がこぼれて止まらなくなりました。「将来は獣医師を目指す」と常々言っている小学校4年生の娘に新聞を渡すと、一心不乱に読んだ後、「生きてる赤ちゃんも殺さんといかんと」「ワクチン打ったらかからんちゃろ。なんで殺さんといかんと」「もしこれが人間の病気だったら、感染地域の人は全員殺されると」など、矢継ぎ早に質問し、うつむいてしまいました。何も答えられない自分の不勉強さを痛感しながら、「不幸な事態が起きたら命を奪うこともしなくてはいけない。それが分かってなお、獣医を目指すなら応援するよ」と伝えました。娘は布団に潜り込み、しばらく出てきませんでした。今回の手紙は、農家の苦しみや現状を知ることができただけでなく、娘にとって大切な機会となりました。投稿した方は本当に苦しい決断だったと思いますが、本当の情報を伝えてくださってありがとうございます。今回の手紙のことは一生忘れません=宮崎市高岡町、嘱託職員(39)

■挫折感計り知れない

 手紙を拝見し、涙が止まりませんでした。努力のかいなく全頭殺処分になり、一頭もいなくなった豚舎に立ちすくむ方々の心情を想像すると胸が痛みます。私も敗戦による引き揚げ者です。口に出せない辛酸をなめてきました。川南を通り、家が改築されていたり、牛舎や豚舎が大きくなっているのを見たりすると、自分のことのように「頑張ったかいがあったなあ」と安堵(あんど)していました。しかし今回の事態です。挫折感や失望感は計り知れないと思います。全頭失う悲しみと不安の中、豚たちに「ありがとう」と言える心根に深く教えられました。多くの人が心を揺り動かされ、絆(きずな)を深くしたことと思います。この事態の一日も早い終息と、被害にあわれた方々の一日も早い回復を願っています=宮崎市、無職男性(79)

■ただひたすら復活願う

 森本ひさ子様のご無念が痛いほど推察され、胸が詰まる思いでいっぱいでした。さまざまな批判も多く聞きますが、今は県民一丸となって口蹄疫終息のための行動を起こすべきです。県畜産業界、ひいては県全体の復活を、ただひたすらに願ってやみません=宮崎市、会社役員

■県民の思いは同じ

 手紙を読み、家族同然の豚に寄せる切々とした思いにぼろぼろと男泣きしながら読みました。こんなに心を打たれたのは母の死以来です。再生への道のりを考えると心が痛いですが、県民の思いは同じだと信じています=宮崎市、自営業(63)

■明日も太陽は昇る

 記事を見て涙が出ました。写真まで出し、今の現状を県民や政府などに訴えるという思いを考えると、人ごとではありません。どんな思いで毎日を過ごされているのでしょうか。「召集令状」を待つ気持ちだと思います。畜産農家に親友がいますが、声を聞くのもつらく、何もしてあげられません。胸が痛みます。心ばかりの義援金を2カ所で出しました。助け合い、支え合うのが人間です。つらいでしょうが、前を向いて希望を捨てず、お体に気を付けて頑張ってください。「明日も太陽は昇ります」=高鍋町北高鍋、無職(73)

■残酷、刺激的すぎる

 死んだ動物の写真を掲載するのは残酷で刺激的すぎる。子どもがショックを受けてご飯を食べることができない=匿名

 県民は家畜が殺処分される現実を理解し、悲しみに暮れている。写真掲載はその県民の感情に対する配慮が全く見られない=匿名