政府は沖縄の米軍普天間基地移設を巡る立場に関して、内と外を使い分ける異例の「2本立て」で調整している。「5月末決着」の破綻を繕うため、社民党や沖縄など国内と、米国の双方から一定の理解を得たと強弁するのは明かな矛盾だ。国内向けに「辺野古」の文字がないとしても、移設先を名護市辺野古から変えるわけではない。2つの文書をつくる場当たり的な対応は今後、新たな混乱を生む恐れがある。
「よく分からないんだよ」。外務省幹部は26日、平野博文官房長官が言及した2本立ての文書案に首をかしげる。政府方針からは、辺野古への移設に反対する社民党に配慮して「辺野古」の文言を落とす見通し。その場合は今後、米国向けと国内向けのどちらの文書を優先させるか、という問題が生じる。
名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に移す現行計画を決めた2006年も、日米の外務・防衛担当閣僚の共同文書には「辺野古崎」と入れ、政府方針からははずした。だが当時とは政治状況も文書の性質も違う。
06年は辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部か陸上か、などの議論はあったものの、政府・与党内に辺野古自体への反対はなかった。しかも、辺野古崎を明記した日米の共同文書を「基本として」や「キャンプ・シュワブへの移設」の文言で、辺野古と分かる形とした。
06年の交渉にかかわった一人は「政府方針に日米共同文書の内容をどう書くかが焦点になる」と指摘する。
当時のように、日米共同文書を「基本として」と盛り込めないケースが問題となるが、政府関係者は「政府方針は日米共同文書を受けた方針であり、効力は当然、日米のほうにある」と説明する。社民党対策を優先して地名を落としても、辺野古という移設先は外交文書で担保される――。これはあくまで政府側に都合のよい恣意(しい)的な解釈ともいえる。
政府方針の形態も定まらない。「首相談話」とするか、「首相の談話」とするかで重みは変わる。「の」が入ると個人的な見解となり、閣僚の署名が要る閣議決定事項ではなくなる。
2つの文書案は、鳩山由紀夫首相が設定した普天間問題の「5月末決着」という体裁を整えるための矛盾を象徴している。急きょ申し込んだオバマ米大統領との電話協議の調整も難航している。
「沖縄県民の理解という意味では十分でないのはその通りだ。地元の理解を含めて5月中の決着を言ってきたので、その分について達成できなかったことは率直に認めなければならない」。岡田克也外相は26日の衆院外務委員会で、首相の「5月末決着」の破綻を認めた。
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