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火星のフェニックス、再稼動は絶望的

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト5月26日(水) 16時52分配信 / 海外 - 海外総合
2008年(左)と2010年(右)に撮影されたマーズ・フェニックス・ランダー。両者を比較すると、右の機体は色が黒ずんでおり、影も小さくなっていることがわかる。下の図は、機体と破損前の太陽電池パネル(青色)が落とす影(オレンジ色)をシミュレーションしたもの。
(Diagram courtesy NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)
 2008年11月に活動を停止した火星探査機マーズ・フェニックス・ランダー(フェニックス)について、NASAは再稼動の望みが絶たれたと公式に発表した。

 フェニックスとの交信を再開する試みはこれまで何度か行われたが、いずれも不調に終わっていた。今回火星軌道上から撮影したフェニックスの写真を分析したところ、少なくとも太陽電池パネルの一部に破損が確認された。

 2枚の写真はいずれも、マーズ・リコナイサンス・オービタ(MRO)搭載の高解像度カメラHiRISEがフェニックスの様子をとらえたものである。2008年7月20日(左)の時点では太陽電池パネルが青く輝いているが、2010年5月7日の撮影(右)では暗褐色にくすんでいることが分かる。フェニックス自体も小さくなったように見え、その影も形を変えている。

 カリフォルニア州パサデナのNASAジェット推進研究所でフェニックス計画のプロジェクトマネージャーを務めるバリー・ゴールドスタイン氏はこう話す。「フェニックスが火星の冬を越すことは難しい。二酸化炭素の氷が太陽電池パネル上に積み上がって、その重みで破損すると当初から想定していたが、今回の写真でそれが確認された」。

 フェニックスが火星の北極付近に着陸したのは2008年5月25日。その後5か月間にわたって北極周辺の状況を探査し、データを地球へ送信し続けた。

 2008年11月、北極が冬を迎えると、フェニックスは十分な太陽光エネルギーが得られなくなり活動を停止した。設計段階から冬の環境に耐えうる仕様を備えていないからだ。しかし再び太陽光が強まれば活動を再開できる見込みがあり、NASAは搭載された「ラザロ・モード」と呼ぶ省エネ機能に期待し、春の到来に備えていた。

 冬が過ぎた2010年1月、NASAは火星上空を周回しているマーズ・オデッセイで、フェニックスからの無線信号を探知するべく調査を開始した。しかし4度にわたるフライバイ(接近通過)でも、フェニックスからの信号は確認できなかった。

 そして今回の撮影によって、再稼動への期待は完全に絶たれることになった。ゴールドスタイン氏によると、気温が著しく低下する冬に大気中の二酸化酸素の氷が太陽電池パネル表面に張り付き、その重みで太陽電池パネルが破損したため、十分な太陽光エネルギーを集められなくなったのだという。

 フェニックスは5か月間の探査の中で、火星表面の氷を確認するなど重要な成果をいくつもあげている。また、火星で降雪を観測したほか、新たに鉱床も発見した。これらは、火星の大気温が時として氷点を超えることを裏付けるもので、生命の可能性を探る上で重要な手掛かりとなる。

 今のところフェニックスの運命は火星に委ねるしかない。「いずれ、残っている太陽電池パネルの塵(ちり)が嵐や強風などで取り払われる可能性はある。しかしこの破損状況では、フェニックスが再稼動する見込みはない」とゴールドスタイン氏は悲観的だ。

Richard A. Lovett for National Geographic News

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  • 最終更新:5月26日(水) 16時52分
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