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マニフェストの現場から:’10参院選/3 収益悪化と医師不足 /兵庫

 ●…地域医療を守る

 医師の増員に努める医療機関の診療報酬を増額する。地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行う。

 ◆進ちょく状況 診療報酬0.19%アップ

 公的保険者から医療機関に支払われる「診療報酬」を0.19%アップ。具体的な地域医療計画の見直しはまだ。

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 ◇いのち背負う「安定経営」

 「町内で入院できず、鳥取市の病院に長期入院して古里を恋しがる高齢者が50~60人もいる。医師確保は地域の死活問題だ」

 新温泉町の浜坂地区で区長を務める中澤典男さん(70)は力を込める。鳥取県と接する兵庫県最北西端の町・新温泉町は人口約1万7000人。日本海に面し、数多くの温泉に恵まれた自然豊かな町だが、人口減少に悩む過疎の町でもある。

 町が経営する公立浜坂病院は約40人が入院し、年間約300人の救急患者を受け入れるなど地域医療を支えてきた。ところが近年は医師の流出が止まらず、08年は6人いた常勤医が5月から2人という非常事態に。中澤さんは他の町民代表と3月、医師派遣を求める約7000人分の署名を県に提出、6月から1人が派遣されることになったが、急場しのぎに過ぎない。

 県立病院や民間の大病院が空白区の県北部は、市町による九つの公立病院が地域医療の中核を担う。ただし、04年に計192人いた公立病院の勤務医は、09年9月には151人と2割以上減少。各病院とも診療科の休診などに追い込まれた。

 地方の医師不足は、研修先を自由に選べる04年の新臨床研修制度で、若手医師が都市部に集中したのが一因と指摘されている。さらに近年の国の医療費抑制政策が、地方の公立病院の経営をひっ迫させた。全国の自治体が経営する約900の公立病院のうち赤字病院の割合は、01年の48・4%から06年には78・9%に急増。赤字が医師集めに悪影響を与え、医師不足が収益を減らす悪循環が、公立病院を苦しめてきた。

 医師不足解消を09年衆院選のマニフェスト(政権公約)に掲げた民主党は、毎年度1~3%引き下げていた診療報酬を今年度、10年ぶりに0・19%プラス改定した。その恩恵は早速、豊岡、朝来両市で5病院を経営する公立豊岡病院組合にも、もたらされている。

 具体的には、組合の今年度赤字額(収益的収支見通し)は11億7000万円と、前年度から6億1000万円も圧縮。経営の運転資金にあたる内部留保金も12億2000万円と7年ぶりに増えた。これは組合の1カ月の支出額に相当し、毎月の収入をその月の製薬会社などの支払いにあてる「自転車操業」経営から脱却できた。

 とはいえ、今年度で18年連続の赤字見通しという事実は重く、総務省からは黒字化を強く求められている。組合の財務担当者は「救急や産科、小児科など採算が取りにくい医療を地方で守る自治体病院は、そもそも赤字になる経営環境だ。年々削られてきた診療報酬だけに、0・19%のアップではあまりに不十分」と漏らす。

 医師不足に苦しむ県北部だが、公立豊岡病院(豊岡市)に4月、ドクターヘリが就航した。救急医療の第一人者で千里救命救急センター(大阪府吹田市)の小林誠人医師(41)が若手救急医4人を引き連れて転任。鳥取市出身の小林医師が「山陰の救命率を世界一に」と自ら志願した。

 竹内秀雄院長(67)は訴える。「高い志を持つ若い医師を処遇するためにも経営を安定させたい。医療のコストカットを続けた国が変わったかは半信半疑で、厳しい地域医療の現場を本当に理解しているか疑問だ」。ドクターヘリが背負う患者の命は、どこよりも重さを増している。【皆木成実】=つづく

〔神戸版〕

毎日新聞 2010年5月27日 地方版

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