厭債害債(或は余は如何にして投機を愛したか)

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<<   作成日時 : 2010/05/25 17:39  

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最近金融危機の中で通奏低音のように響いているのが格付け会社の提供する信用格付けです。いくつか例を挙げましょう。

1. ギリシャ問題で、ECBが担保適格をギリシャ国債については「投資適格外」であっても認めることにしましたが、これはもともとECBの担保適格が格付け会社の投資適格(少なくとも主要1社)であることを要件としていることが根源にあり、投資適格外となることで担保として受け入れられなくなれば一部の金融機関におけるファンディングがとまってしまいシステミックなリスクに発展することを恐れたものであり、またギリシャ国債の流動性をサポートする上でも重要な施策だったと言えます。
2. ギリシャが大量の売りを浴びたひとつの原因は、4月下旬にS&Pがいきなりギリシャ国債を投資適格外のBB+にまで3ノッチ一気に格下げしたことですが、これによって一部の投信や年金などでは投資のガイドラインにそぐわなくなったところが出たため、ともいわれます。また、主要な債券インデックスでも全てあるいは主要なところの平均の格付けが投資適格を下回ると、インデックスから外れることになり、パッシブ運用のマネージャーは必ず売らなければならない羽目に陥るのです。
3. 大西洋をまたいだ米国で成立しようとしている金融改革法案ではまず、金融機関に「too big to fail」の概念をなくすることとしています。この法案が成立すると、暗黙の政府のバックアップが期待されている米国の大手金融機関などが軒並み格下げのリスクにさらされる(格付けには一定の政府のサポートを現状では織り込んでいるため)と言われています。ちなみに、一部の大手金融機関は格下げによりA格を失う可能性があり、そうなれば一定の契約に関して「追加担保」の差し入れを要求される可能性がある、すなわち資金がとりづらくなる可能性があります。最近ドルのLIBORが上昇しているのはそういう事情があるとも言われています。
4. さらに、米国の金融改革法案で意外に報道されていない内容ですが、格付けを今後監督当局の規制・監督の指針や基準として用いることが禁止されるようです。つまり上に書いたような適格担保の基準としたり、日本の保険会社のソルベンシーマージンなどの計算に使わせたり、あるいは新BISの資本充実基準に使ったりと言うようなところにも影響が出る可能性があります。

これ以外にも格付け会社にまつわるヘッドラインはたくさんあるわけですが、こういう危機の状況の中、格付け会社が持つ存在感が良きにつけ悪しきにつけ大きすぎてしまっていると言うことです。本来は投資家が投資先の信用判断を行うサポート業務に過ぎなかった格付け会社が世界を振り回してしまっている。きっと格付け会社のほうでも(一部意図的にそのパワーを悪用している部分はありましたが)その影響力を最近はもてあましてしまっていて、最近は妙に腰の低さが目立ちます。

とりわけ格付け会社の判断を公的な監督や基準に採用したというのは今から思えばちょっとやりすぎだったのだと思います。公的お墨付きがあることが「盲従」というにふさわしい行動様式を金融機関や投資家に植え付けてしまった。一方でこのことが投資判断までのハードルを下げて市場の流動性を増し、過去30年ぐらい金融業界と市場の隆盛に貢献したことは言うまでもありません。証券化商品の問題はまさにこのモラルハザードともいえる現象の一部でしかありません。

さて、今起こっていることは過去数十年にわたって金融で社会の問題を何とかしてきた部分が限界を迎えているということです。そして金融の力だけで人々が富を増やすことができなくなって、やむを得ず今、人間生活の原点である真の「生産」に回帰しようとしているのではないかと思います。金融の拡大に大きな役割を担った格付けも、それゆえ、これまでのように公的なお墨付きをバックにした安易な投資の説明ツールとしてではなく、投資家がきちんと「真の経済主体」に対する投資判断をする上での補助資料という原点に立ち返る必要が出てきているのだと思います。

格付け会社はこれまでも証券化商品のいい加減な格付けなどで批判されあるいは提訴されたりしているわけですが、それもまた、格付けがそれほどまで力を持ってしまったことの裏返しでしょう。そのような役割は「純粋な民間企業」を標榜する格付け会社には荷が重過ぎるはずなので、このあたりで原点に立ち返るのは良いことだろうと思うのです。偶々、IFRSの改定のところで債券の評価方法として償却原価法を適用できるための要件として「融資の持つ特徴を有する」ことがあげられているのですが、まさにこれから債券の投資家も投資やメンテナンスに際して「融資的」なアプローチが必要になってくるのではないか、と思います。ただし金融全体のダウンサイジングにはつながる話かもしれません。


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内 容 ニックネーム/日時
数字しか分からん馬鹿どもが役立たずなことは始めから分かっていた。
変数が多すぎて再現性の精度なんか期待できないのにも関わらず、強引に大丈夫とか市場とか科学とか言いながら、モデル(妄想と同義と私は解釈する)に立脚することしか出来ない経済学者ごときが無茶苦茶を続け、それにヘコヘコしてるゴミ金融業者ども。

とりあえず日本はアジアの成長に上手くすがるしかないじゃない。
kazzt
2010/05/27 01:01
経済学者?wwヘコヘコ??www

B2のアプローチ見直しするとしても、結局昔のやり方に戻すことになるんですかねぇ。
ゴミ金融業者
2010/05/27 09:18

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