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【ドラニュース】


松井佑、振るスイング

2010年5月27日 紙面から

 とにかくバットを強く振るのが松井佑の流儀。キャンプ前から「思い切り振ることを意識しています」と呪文(じゅもん)のように繰り返してきた。そして信念は結果に表れている。規定打席には達していないが、打率3割2分4厘。代打では9打数5安打と驚異的な数字を残している。

 「(落合)監督には『お前は強いスイングができるんだから、変に当てにいくな。まっすぐに振り遅れないようにタイミングを合わせておけ』と言っていただいて。自分でも思い切りのよさは、いいところだと思っているんです。結果を恐れず、強く振ったほうが、かえって良い結果が出るんじゃないかと思って。今はそういう気持ちでやっています」

 指揮官も認める振りの強さ。原点は意外な球歴にあった。実は、野球より前にソフトボールを経験している。小学校3年生で地元の「衣摺(きずり)西ソフトボールチーム」に入団。小学校を卒業するまで、投手兼内野手として活躍した。

 「ソフトボールの球って軟式より大きいですし、重いですので、強く振らないと飛ばないんですよ。遠くに飛ばすことが好きだったので、思い切り振ろうとしたんです。飛ばすコツもあるんでしょうけど、パワーも必要だと思います。そういう意味では、今のスイングの原点ですね」

 小学生向けのソフトボールの重さは約163グラム。対して軟式野球は126・2〜129・8グラム。30グラム強の違いが、松井佑を大きく成長させていた。中学に進学してすぐ「大阪平野富士ボーイズ」で野球を始め、自身の長打力に気づいた。

 「体はどちらかというと華奢(きゃしゃ)で身長も大きい方じゃなかったんですけど、3年生に上がったら、4番になったんです。周りにはもっと体の大きい選手はいたんですけど。思い切り振るのをソフトボールでやったのが、よかったのかも知れません。ソフトボール出身の選手って、長打力もそうですけど、肩も強い選手が多いような気がするんです」

 周囲は小学生で野球を経験した選手ばかり。だけど自分の方が飛距離が出る。長打力そして強肩を武器に活躍。中学を卒業すると、地元の強豪の大商大堺高に進学した。そこでソフトボールでつちかった長打力に磨きをかけることになる。

 「中学生の時はただ、がむしゃらに振っていたんですけど、ただ強く振るだけではダメだと教わって。高校の指導者から、バットが外から出ていると言われました。目からウロコでしたね。簡単に説明すると、ボールの外側をたたいていたのを、ボールの内側をたたくイメージでバットを出すようにしたんです」

 バットを体の内側から最短距離で出す。大商大堺ではひたすら、それだけを意識して練習してきた。「(高校で使う)金属バットは多少、外から出ても飛ぶんですけど。(プロなどで使う)木では飛びませんから」。プロ入りを意識し始めたのもこのごろ。知り合いの大学生に木のバットをもらい、ティー打撃やフリー打撃を繰り返した。

 「木のバットは(ボールを)ちゃんととらえないと、手も痛いですし。飛ばないですし。とにかく『(バットを)内から、内から』と思っていました。今、ビデオを見ると、内から出過ぎだろうというくらいですね(笑い)。でもあの時に極端にやっていたから、プロになった今、バットが内から出るように、体が自然とそうなっているんだと思いますけど」

 高校2年生からチーム事情もあり、投手兼外野手となったが、東農大では1年生から外野手を任された。大学通算20本塁打の成績を残し、昨秋のドラフト会議で念願の指名を受けた。

 「打って、走って、守れる3拍子の選手になりたいですけど、まずは代打からでも、監督に信頼されるような選手になりたいです。これからも思い切りのよさを全面的に出していこうと思っています」

 ソフトボールが原点となった長打力。そして思い切りのよさは決して失うつもりはない。松井佑は信念を貫き、目標のレギュラー獲りへ突き進もうとしている。

 【松井佑介(まつい・ゆうすけ)】1987(昭和62)年7月10日、大阪市生まれの22歳。183センチ、83キロ、右投げ右打ち。ドラフト4位で今年入団。大商大堺高では1年からベンチ入り、秋から三塁手としてレギュラー。2年で投手転向、最速143キロで3年時には府大会準優勝。東農大進学後は左翼手、中堅手。公式戦通算20本塁打、104安打。50メートル6秒0、遠投120メートル。推定年俸1000万円。

 

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