日本では「(伝統)文化」とみられることの多い囲碁。だが中国棋院(北京)の劉思明院長は「昔から囲碁はスポーツに分類されている。肉体を動かす競技も頭脳の競技も同じ」と語る。中国棋院が属するのは国家体育総局。文化庁が日本棋院を所管する日本とは見方が異なる。
大会では陸上や野球など一般のスポーツ選手と同様、囲碁選手も尿検査を受ける。関係者が懸念するのは、このドーピング検査だ。風邪薬などの服用やサプリメント(健康補助食品)を摂取する際も、どんな成分が含まれているか、注意が必要になる。
陽性反応が出て、悪質な行為と認められたら、名人戦などの国内棋戦への出場が最大2年間禁止される可能性もあるという。「ドーピング検査は初体験で、対応に苦慮している。専門医に相談できる窓口を設けるなどして、選手たちの不安を取り除きたい」と囲碁連合の担当者は語る。
今月18日に開いた棋士向け説明会では、ドーピングについても説明された。会の後、井山名人は「筋肉増強剤が囲碁に効果があるとは思えないけれど」と言いつつ、「体内に入れるものに気をつけたい」と語った。
■高い「金」のハードル
アジア大会で「囲碁の日本代表に金メダル!」が実現する可能性はあるのか。現状では、実現は容易ではない。
かつて実力で世界一を誇った日本だが、近年は中国や韓国に抜かれ、実績で大きく水をあけられているからだ。
第一人者を日本代表に選べない苦しさもある。
現在、日本で男女それぞれの第一人者である張栩(ちょう・う)棋聖と謝依旻(しぇい・いみん)女流本因坊は、いずれも台湾出身。アジア大会では日本国籍の選手しか日本代表になれないため、2人は台湾代表として日本の前に立ちはだかることになりそうだ。
大竹会長は会見で「(目標は)金メダルしかない。若干の強がりもあるが、そのつもりで選手を送り出す」と語った。「日程が許せば強化合宿もやりたい」という。(伊藤衆生)