宮崎県で多発している家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)を巡り、山田正彦副農相は24日、県側が高級牛ブランド「宮崎牛」保護のため、殺処分をせずに経過観察とする特例を要望していた県家畜改良事業団(高鍋町)の種牛49頭について、要望を認めない方針を正式に表明した。山田副農相は「できるだけ特例は認めるべきではない」と説明した。県内の畜産関係者からは経過観察を求める声が上がり、殺処分を実施している県も救済を求めている。
国の現地対策本部長を務める山田副農相はこの日、赤松広隆農相に状況を報告するため一時帰京。その席で49頭は殺処分することで一致した。鳩山由紀夫首相や平野博文官房長官にも理解を得たという。山田副農相は会見で「ウイルスをまき散らすことは許されないことだと、県には申し上げている。県などは率先して順法を貫かねばいけない」と述べた。
同事業団は移動制限区域にあるが、国はエース級種牛6頭については特例措置として避難を認め、県は13~14日に西都市に避難させた。その後、事業団で感染疑いの牛が確認され、残っていた49頭は殺処分対象になった。
しかし、エース級6頭のうち、最も精子供給量の多い「忠富士」の感染疑いが判明し、22日に殺処分された。殺処分を待っていた49頭に症状はみられないことから、県は経過観察を条件に殺処分をしないよう、農水省側に要請していた。また、山田副農相はエース級の残る5頭について、1頭でも感染疑いが出た場合の対応について「すぐに(赤松)大臣と相談する」と述べた。
一方、搬出制限区域の家畜を早期出荷させて緩衝地帯をつくる政府の方針について山田副農相は、感染した場合にウイルスの発散量が多い豚の食肉処理を優先し、一定期間、肉を保管させる意向を明らかにした。保管は政府方針と異なるが、山田副農相は「(出荷すれば)風評被害があるかもしれない」と理由を述べた。ワクチン接種については25日までにほとんどを終えたい意向を示した。【佐藤浩】
種牛49頭の殺処分方針について、宮崎県の東国原英夫知事は24日「種牛は日本の畜産の大切な財産。一般の肉用牛とは違う特殊性を考えてほしい」と述べ、49頭の救済に向けた協議を国に求めていく方針を示した。宮崎県庁で記者団に語った。
毎日新聞 2010年5月24日 21時48分(最終更新 5月25日 1時50分)