議会で不信任案は不成立
町民がリコールに立ち上る
言うまでもないことだが、目的が正しければ法律違反も許されるという理屈は、法治国家では通用しない。賄賂を認めながら辞職せずというのは許されないとの声が町議の中からも上がり、町長への不信任案が提出された。臨時会が3月4日に開催され、採決となった。議員定数は13人。不信任案に賛成したのは岩本泰三郎議員、久保田実生議員、白石英雄議員、竹田善浩議員、田中正議員、松本雄二議員、浦野信義議員の7名にとどまり、成立に必要な4分の3に達せず不発に終わった。つまり、6人(井上孝行議員、上田定議員、緒方裕子議員、白石富雄議員、高瀬知恵子議員、畠田勝廣議員)が、町長の続投を容認したのである。
こうした結果を受け、事態を憂慮した町民たちがリコール運動に立ちあがったのである。不信任案に賛成した7人の町議も加わり、「山本町長をリコールする会」(矢野一義代表・以下リコールする会)が結成された。署名集めは4月21日からスタートし、5月20日までの1ヵ月間に有権者(約1万人)の3分の1署名がそろえば、本請求が成立。住民投票となり、過半数の賛成で町長の失職が決定する。冒頭に紹介したチラシが町内にばら撒かれたのは、リコール運動が開始される、まさにその前後の出来事だった。
「今のところ直接的な脅しはありませんが、住民を不安がらせるようないろんなデマが流されています」。リコールする会の矢野一義代表は、厳しい表情でこう語る。町民から事務所にいろんな問い合わせ電話が入るという。例えば、リコールが成立したら、町営バスがなくなってしまうと聞いたとか、町営住宅の家賃が倍に引き上げられる、なかには生活保護が打ち切られると聞いたというものまで。また、署名簿が役所の前に張り出されるのかといった不安の声などなど。
町民の中に山本町長を崇拝し、かつ、畏怖するようなムードがあるという。それだけにリコール運動へのブレッシャーは生半可なものではない。リコールする会の副代表のひとり、松本雄二町議は「誰も町長に逆らえない状況が続いてきた。すべてが町長のおかげだという“山本神話”なるものまで広がっていた。40年間という長さは人間を腐らせてしまう」と、解説する。