相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記
【第2回】 2010年5月13日
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相川俊英

前代未聞!贈賄で起訴された町長は居座り
擁護のビラがばら撒かれる福岡県添田町の「見識」

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 添田町の山本文男町長が贈賄容疑で逮捕されたのは、今年の2月2日のこと。賄賂の送り先は福岡県の中島孝之副知事。後期高齢者医療広域連合の設立に際し、県町村会に便宜を図ってもらった謝礼として、現金100万円を副知事室で渡した疑いだ。広域連合の分担金割合を町村側に有利に取り計らってもらった見返りだ。山本町長は県町村会長を長年、務め、県庁生え抜きの中島副知事とも昵懇の仲だった。

 汚職事件の端緒は、県町村会事務局からの内部告発だった。内容は、事務用品の架空発注などを繰り返して裏金を作り、県幹部などへの官官接待の資金に充てているというものだった。昨年末に裏金作りを担当した事務局職員らが詐欺で逮捕され、不正な公金支出による官官接待の実態が明らかにされた。この時点で接待された側の中島副知事は道義的責任をとり、辞任した。全国知事会の会長を務める麻生渡・福岡県知事の腹心で、実力者だった。

 県町村会を舞台にした不正な公金支出の捜査の過程で、贈収賄事件が発覚した。収賄側の副知事と贈賄側の町村会長(山本文男・添田町長)らが逮捕され、福岡県は大騒ぎとなった。主犯の2名とも知事に近い人物で、県政に絶大な影響力を持っていたからだ。

 山本町長は保釈後の3月1日、町議会の全員協議会で「町自体に悪いことをした覚えはない」などと弁明した。また、「(副知事に渡した)祝い金が多すぎた」と開き直り、自らの進退については「民意に従う」と言葉を濁した。その直後に開かれた記者会見では「事件の被害者は私だ」とまで語り、公金を不正に使い、政策を大きく歪めたことへの反省は皆目うかがえなかった。

 こうした非常識な言動を支えたのが、町民や町議の一部が逮捕直後から取り組んだ山本町長の続投を求める署名活動だ。山本後援会が中心に進めたものだが、「5700人から5800人分の署名が集まった」(後援会長の話)という。町長はこれこそが民意とばかりに、批判の声に耳を塞ぎ、居座りを続けているのである。

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相川俊英

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から「週刊ダイヤモンド」委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組「サンデープロジェクト」の特集担当レポーター。主な著書に「長野オリンピック騒動記」など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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