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更新:10月18日 12:15デジタル家電&エンタメ:最新ニュース

SEDは薄型TVの「レクサス」――圧倒的高画質は折り紙つき【コラム】

 東芝とキヤノンが共同開発しているSEDの55型フルハイビジョンモデルが、今月上旬に開かれた家電見本市「CEATECジャパン2006」で初公開された。昨年のCEATECで展示された36型モデル(720p)も大いに衝撃を与えたが、今回はそれとは比べものにならないほど、さらに画質が向上していた。(麻倉怜士のニュースEYE)

 今回公開されたSEDは単にフルハイビジョンに画素数が増えたということでは語り尽くすことができない、大飛躍した画質だった。ここまでの画質になると、もはやそれは画質評価の対象ではなくなり、謙虚に頭を垂れて映像を見守りたい(垂れては画面は見えないが)という気分になってくる。

 注目すべきはSEDブースに3台、東芝ブースに1台の計4台のSEDが展示されていたことだ。あるSEDは赤っぽく、あるSEDは青っぽくなどということがまったくなく、どれも均一な画像を見せていた。これは安定したものづくりができるように、製造技術が進歩していることを示唆しよう。5日間の会期中も安定して動作しており、一部で懸念されている製造上の問題は克服されつつあるようだ。

■ディスプレー開発は時間がかかって当たり前

SEDブースには3台のSEDが並べて展示された

 SEDは発売の延期が今春に発表されているが、延期が相次ぐのはディスプレーデバイスの開発の宿命といってもいい。そもそも安定して発光させ、確実に動作させ、寿命を確保し、性能をフルに出すトータルなプロセスづくりは非常に時間がかかるものだ。

 液晶はアイデア段階から実際にちゃんとしたテレビになるまで150年くらいかかっている。プラズマにしても40年かけ、一つ一つ問題をつぶし、改良に次ぐ改良を重ねてきた。SEDの場合はキヤノンが開発を開始したのが1980年代の後半だから、来年の2007年にも発売しようというのは、恐ろしいほどの超スピードといっていい。液晶やプラズマのひそみに倣うと、2030年頃でもおかしくない計算なのだ。

 ディスプレーデバイスの開発は難事中の難事であり、ある程度まで開発が進むとまた次の課題が出てきて、それをつぶさないといけない。逆に言うと、課題は開発がそれなりに進展しないと出てこない。だから予想以上に時間がかかるのである。しかし画質の良さでいうと、液晶やプラズマとはまったく次元が違う映像であり、映像ファンとしては少々発売が遅れても待ち続ける愉しみがある。

■SEDの画質の素晴らしさ

 液晶はブラウン管に比べてフォーカス(画像の締まり)は向上するが、色再現や階調性、コントラスト性能はあきれるほど悪い。一方、ブラウン管は色再現や階調性、コントラスト性能は素晴らしいものの、フォーカスが合わない。SEDの良さとは、720pの36型を発表したころからいわれているが、液晶とブラウン管の「良いとこ取り」であることだ。

 SEDはブラウン管と同様の発光原理で、電子源から電子ビームを真空中に放ち、発光面に塗布された蛍光体にぶつけて発光させる。違うのは、ブラウン管では電子源が1つだけだったが、SEDは画素数分の電子源があるということだ。画素で画面を構成するから画面の均一性やフォーカス性がいいし、発光原理がブラウン管と同じだから階調再現性にも優れる。今回の55型はフルハイビジョンなので、フォーカスが遙かに向上した。もちろん階調性やコントラストや色再現というブラウン管の良いところは、そのまま継承しているのである。

ブラウン管(CRT)とSEDの構造比較(東芝のSEDホームページより)

 さらに今回のSEDはコントラストが5万対1といっているが、これは動画を再生するものとしては最高だ。CEATECでの展示で、パイオニアは2万対1のプラズマをデモンストレーションしていた。シャープは100万対1のメガコントラスト液晶を発表したが、やはり私には液晶ならではの黒の質感に冷たいキャラクターを感じた。

■製作者の想いが伝わる感動画質に

この写真では伝えきれないが、女性の肌の表現がすばらしい

 今回SEDの画質を見て特に強く感じたのは、高画質を超えた映像の圧倒的な訴求力、エネルギーだった。これからは画質を形容する言葉が変わっていくのではないかとも思えた。階調とか解像度とかいうタームではおさまりきらない、映像の深み、人間性、凋密さ、本物感こそ、論じなければならない時代がやってくる。

 特に女性の肌の表現が非常にスムーズで、シャドウから明部に移るときのグラデーションのうつろいとたたずまいの細かさの表現は、これまでのすべてのディスプレーデバイスと比較して、体験したこともないレベルであった。それはコンテンツが持っているリアリティを素直に、そして濃密に表出していることといってもいい。

 スペインの港町のロングの夜景シーンでは、暗闇の中で地上の街灯がきらめくように光っていた。港の水面も怪しくきらめいていた。同じライトでも照明のライトと車のヘッドライトの色の微妙な違いがわかる。漆黒な黒の中に、白ピークがきわめて尖鋭に立ち上がっている。ダイナミックレンジが極端に広い映像なのだ。

 この夜景の映像で分かったことだが、SEDは撮影者の意図をそのまま再現している。漆黒とライトの対比こそ、ここでの場合の撮影者の意図であり、それを本物以上のリアリティで伝え、観る者を圧倒的な臨場感の世界に誘う。まるでそこにはディスプレーというメディア機器はなく、あたかもコンテンツをダイレクトに眼前に見ているかのようなスーパーリアリティさえある。これぞメディアの理想の形ではないかと思う。

■SEDが大衆車になるとき、液晶は自転車になる

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