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社説:児童ポルノ ネット上のまん延防げ

 児童ポルノの写真や動画がインターネットでは簡単に見られる。ネットに流されると回収不可能になり、被写体になった子どもにとっては自分のわいせつ画像が永続的にさらされる。児童ポルノがはんらんすることで子どもへの性犯罪を誘発する恐れも指摘されている。09年にネットを使った児童ポルノ事件の摘発は507件で前年の約2倍となったが、違法サイトは絶えず発生しており追いつけないのが実情だ。サイト管理者に対する削除要請も行われているが、利用者が閲覧しようとする際にプロバイダー(接続業者)が自動的に遮断できればさらに効果は上がる。この「ブロッキング」と呼ばれる方法は欧米を中心に導入する国が増えており、ようやく日本でも実施されることになった。

 以前から日本の児童ポルノ対策の遅れは批判を受けてきた。どんな画像も一度ネットに流されれば世界中に広がるのであり、対策は各国が協調して行われなければ効果がない。日本発の児童ポルノが各国にまん延していることを重く受け止めるべきだ。また、児童ポルノと性犯罪を安直に結びつけることには異論もあるが、ネットを利用する人の中には当然ながら未成年者やポルノ映像に影響されやすい人も含まれていること、現実に子どもの性被害が深刻であることも考えねばならない。

 プロバイダーが利用者の閲覧を検知する行為が、憲法や電気通信事業法の「通信の秘密」の侵害に当たるとの指摘もある。実際の運用は第三者機関が児童ポルノを掲載しているサイトのリストを作成して管理し、プロバイダーがリストに基づいてブロッキングを実施する。第三者機関がどのようなメンバーで構成され、どのような基準でリストを作成していくのかが重要になる。通信の秘密が侵害されるリスクを考慮しても子どもを守らなければならないからこそブロッキングは必要なのであり、それ以外の目的での「検閲」や中立公正に疑念が抱かれるようなことがあってはならない。一方、遮断された側から訴訟を起こされるリスクを回避しようとして実効性が薄れては意味がない。

 ファイル交換ソフトでの流通はブロッキングでは止められないなど、対策はこれで十分なわけではない。昨年の国会では与野党が児童ポルノ禁止法改正案を提出し修正協議がまとまりかけたが、解散で宙に浮いたままになっている。野党になった自民党と公明党は改めて単純所持を処罰の対象とする改正案を国会に提出している。規制の対象をめぐって意見が分かれていることなどが議論の進まない背景にあるが、まず現実の被害に対して毅然(きぜん)と取り組むべきである。

毎日新聞 2010年5月26日 2時31分

 

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