【コラム】モラルハザード(下)

 モラルハザードに陥るのは、保険加入者・金融機関・信用格付け会社だけではない。国も国民もモラルハザードに陥る。ギリシャ危機のように、7500億ユーロ(約86億円)もの緊急救済措置が取られるというなら、これを保険金の支払いのように考え、モラルハザード現象に陥る周辺国が現れるだろう。

 根本的な解決策は、国民に与えられる福祉メリットを減らし、国民が支払う税金を引き上げることだ。しかし、最も修正が難しいのが国民のモラルハザードと言える。国民は質のよい医療、綿密に張り巡らされた社会安全網、各地に通じる高速道路、自宅から30分の距離にある地元空港、何者にも屈することのない強い軍隊を望んでいる。だが、それと同時に安い税金を求める。ニューヨーク・タイムズ紙のデービット・レオンハート記者はこの点を指摘する。これも一種のモラルハザードだ。

 自分たちが支払う税金以上に多くの恩恵を政府に要求するのは、自覚症状のない慢性の病気のようなものだ。選挙を目前に控えた政権は無理をしながらも借金を作り、それが繰り返されることで累積債務の危機に陥る。こうした状況はギリシャだけではない。スペイン・ポルトガル・イギリス・米国でも同じだ。

 だが、これは人ごとではない。6月2日の地方選挙で、自分の能力以上のことを約束する候補者がいたら、それもやはりモラルハザードだ。逆に、候補者ができないことを有権者が要求すれば、それこそまさにモラルハザードと言えよう。

キム・グァンイル副局長兼国際部長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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