致死性の新種の藻を発見ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト5月25日(火) 12時35分配信 / 海外 - 海外総合
この新種の藻はプロトテカ・クティス(Prototheca cutis)で、藻に感染し潰瘍ができて入院していた日本人の患者から皮膚のサンプルを採取して分析した際に発見された。 プロトテカ・クティスは南極を除く世界各地の土と水の中に生息すると考えられている。塩素処理などの消毒を行っても死なないほど生命力が強いため、特に農村部の下水や家庭廃棄物の中で繁殖する。 プロトテカ・クティスに感染した日本人患者は現在では完治しており、この患者以外に感染例は確認されていない。 しかし、今回の研究を率いた帝京大学医学部の准教授槇村浩一氏は、この新種の藻が近縁の有害な微細藻類(世界中の水の中に生息する単細胞生物)によく似た振舞いをするのではないかと考えている。 そうだとすれば、プロトテカ・クティスは汚れた水などによって傷口からヒトの体内に入り、腕、足、顔などの炎症や潰瘍の原因となる。槇村氏によれば、症状の進行は遅く、発症するまで2週間以上かかることもあるという。また、微細藻類による同様の感染症は、ウシ、シカ、イヌ、ネコでも報告されていると同氏は話している。 微細藻類の感染症が重篤になると、血液に侵入した細菌が引き起こす敗血症や、脳と脊髄の周辺の細胞が炎症を起こす髄膜炎を発症し、死亡する場合もある。研究によると、このような病状の進行は体の弱った入院患者に見られるのが普通だという。 微細藻類の感染症はまれなため、治療方法も少ないと槇村氏は話す。現在のところ、唯一の効果的な治療薬は抗真菌薬である。微細藻類は真菌ではないが、最も重篤な微細藻類の感染症患者の59%が抗真菌薬で治ったとのデータがある。治癒できない患者は極度に重い感染症によって死亡するという。 もっとも、世界の微細藻類のほとんどは「通常は無害」であり、だからこそ今回発見されたプロトテカ・クティスは「重要で興味深い研究対象」なのだと同氏は強調する。 この研究は「International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology」誌2010年5月号に掲載されている。 Christine Dell'Amore for National Geographic News 【関連コンテンツ】 ・ アシカの異常行動は藻類の毒が原因か? ・ バクテリアにおおわれた浜辺 ・ 飲料水の太陽光殺菌法に意外な落とし穴 ・ ウイルスに感染するウイルス、定義を変える? ・ “死に至る12の病”、温暖化の影響か
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