|  | きょうのコラム「時鐘」 2010年5月26日
 金正日という男は、なぜいつも同じ服装で現れるのだろう。それも、威厳のかけらもない身なりを押し通す テレビ映画の刑事コロンボも、さえない格好で登場する。よれよれのコートに安物の葉巻。犯人を油断させて、事件を解くカギをつかむ。国際世論は極悪非道と非難するが、あの身なりの首領さまがそんな人であるはずがない。人民にそう信じ込ませる芝居だろうか 同じ格好の男は、一目で見分けがつく。逆に、他人が影武者になり済ますこともできる。眼鏡を外して服を換えれば、正体は見破られにくい。命を狙われやすいが、逃れる手だてもある。あの男、愚かなのか、したたかなのか その「着たきりスズメ」が好むという映画「男はつらいよ」に、寅さんの名せりふがある。「いいか。オレが芋を食って、お前の尻から屁(へ)が出るか」。危険な魚雷を放っておいて、知らぬ顔を決め込む理不尽が、あの男には通用する 日本海に緊張が走る折も折、軍事のイロハをにわかに勉強した、という指導者の告白を聞かされた。無論、あれは相手を油断させる高等戦術。そう思わないと、やりきれない。 |