口蹄(こうてい)疫問題 49頭の種牛の殺処分めぐり、宮崎の畜産農家から悲痛な声も
宮崎県で広がっている口蹄(こうてい)疫の問題で、殺処分か救済か、49頭の種牛をめぐり、地元の畜産農家も揺れている。
次々とワクチンを打たれ、泣き声を上げる豚。
ワクチン接種の様子を撮影した宮崎県の畜産農家は「これで殺処分という形になるのかなというふうに思いますんで、次に進んでいかなきゃいけないという気持ちはあるんですけど。ちょっと落ち込むと...」と話した。
71人の獣医師らによって行われる懸命の作業。
政府は、一部反対している農家を除き、25日中にワクチン接種を終わらせたいとしている。
25日、ワクチン接種した宮崎の畜産農家は「まず、この病気を収めるということ。その目的のためには、やむを得ない」と話した。
そんな中、地元・宮崎の畜産農家からは、「今、頑張れていられるのはですね、その(種牛)49頭が、まだ生き残っているからです。これがなくなったら、もう夢も希望もないですね...」と、悲痛な願いが寄せられた。
県の家畜改良事業団が管理している49頭の種牛をめぐる問題で、東国原知事は24日夜、再び「救済」を求めたが、赤松農水相は、あらためて「殺処分」の方針を強調した。
東国原知事は24日、「われわれの思いとしてはですよ、ここはやはり、種雄牛という特殊性というのをかんがみていただきたいなと」と語った。
これに対し、赤松農水相は「疑似患畜に指定された以上、これは法律に書いてあって、直ちに殺処分としなければならないと書いてあるわけですから、これは法律に従ってやるのは、当然のことだと思います」と述べた。
家畜伝染病予防法には、違反した場合、3年以下の懲役、または100万円以下の罰金とある。
この決定に、宮崎県の畜産農家は「(49頭の種牛を)もうわたしは、どうしても残してほしいと...」、「苦渋の決断をした人たちの(再起への)希望がなくなると思います」と話した。
その一方、「法にのっとって、処分するべきものは処分するということでないと、秩序が守れないと思います」との声も聞かれた。
こうした中、自ら種牛を飼育する農家は、種牛の殺処分に、無念の思いを語った。
宮崎・三共種畜牧場の薦田長久代表は「種牛づくりに、わたしは人生を懸けたんですよ。これで終わりになるのかなぁと思うとですね...、本当にいたたまれないですよ」と語った。
トラックの荷台に載せられる、おびただしい数の豚の死骸(しがい)。
そして、畑の一角に掘られた穴に敷かれたブルーシート。
こうした殺処分後に、埋める場所の確保が進まず、感染が拡大したとみられている。
非常事態宣言から1週間、一刻も早い収束が望まれている。
家畜伝染病予防法では、「疑似患畜に指定された家畜は直ちに殺処分」することが規定されていて、違反した場合には、罰則が科されることになる。
また、緊急性がある処分については、県の職員である家畜防疫員が行うことができるという。
今回問題となっている種牛49頭は、県の家畜改良事業団が一元管理していたもので、東京農工大学の白井淳資教授は「民間にも種牛クラスの牛がいるので、県の種牛だけを特例として認めたら、きりがなくなってしまうのではないか」と話している。
(05/25 19:09 テレビ宮崎)